ビジネス

2019.10.16

藤原ヒロシがインスタで伝える「大いなる無駄」の価値

藤原ヒロシ


しかし、そうして作るもの作るものがヒットしていくと、藤原は自分の会社を大きくするのをやめた。その理由に、世界の大手と個人名で仕事をする藤原ヒロシらしさがある。

「リスクが嫌いなんです。会社をやっていると、在庫を持って、人も雇って、給料も上げていかないといけない。会社は大きく育てなきゃいけないから、終わりがない。でも、僕はいつも同じがいい。経営に向いてないなと思ったんです。僕は常にソロで動きたい」

それからは、生産体制を持たず、プロデュースやデザインなどで他のブランドと組んで収益をシェアするビジネスに転換。結果として、すべてコラボレーションという形になった。



制限のある中で、想像以上を目指す

いいなと思うことはiPhoneにメモするという藤原が、最近保存した言葉がある。「戦略を立てて実現できるのは、中の上が最高値。純粋に好きなことをして、そこに偶然が重なると、想像を超えたものになる」というものだ。

別に戦略を立てるのが嫌いなわけでもない。でもその「想像を超える」ことに彼は楽しみを感じているし、好きなものに忠実なだからこそ、それがよく起こり得るのかもしれない。

とはいえ、国内外の無数のクライアントの案件を同時並行でこなすのは想像するだけでもハードだ。ソロは自由かもしれないが、常に自分で選択し続けないといけないのは大変ではないだろうか。

そう聞くと、「それぞれのプロジェクトにチームあって、いいなと思ったらある程度任せるようにしています」と言う。それに、自分の思い通りにならないと気が済まないということもない。「相手にもできることとできないことがあるし、狙いもケースバイケース。僕は、制限がある方が良くて、その中でベストを考えていく」。

また、「僕がやることは、全員に受けいれられなくていいんです」という。例えばナイキとの仕事の場合、ナイキが藤原に期待しているのは、いわゆる“インフルエンサー”をインフルエンスすることだ。カニエ・ウェストとのコラボであれば、そのモデルが全世界に投下されるが、藤原が手がけたものは、市場への導入として限定で展開される。

「僕が責任を持つのは、導入部分だけ。その後、どんな調整がされ、どう展開されているかは知りません」。そんな関係がもう何年も続いている。



ところで、藤原のインスタグラムには、文字が少ない。ただただ、彼の目にとまったもの、今いる場所などの写真が、説明不足でアップされる。その対象をどう思って投稿したのかがわからない。

ただ、投稿自体はとてもリアルだ。この9月、10月だけでも、イスタンブール、ミラノ、伊勢、大阪、ロンドン、京都と各地へ赴き、あらゆる情景をインプットしたところからくるアウトプットは、その生っぽさが興味をそそる。
次ページ > インフルエンサーというか「フィルター」

文=鈴木奈央 写真=山田大輔

タグ:

連載

#インフルエンサーの研究

ForbesBrandVoice

人気記事