iPhone並みの新製品をつくるのはほぼ不可能
初代iPhoneは、2007年1月に発表され、6月に販売を開始した。2007年、2008年、2009年の販売台数を見ると、それぞれわずか140万台、1160万台、2070万台。売上はそれぞれ1億2300万ドル、18億ドル、68億ドルだった。
ジョブズがCEOを務めていた最後の事業年度(2011年)におけるiPhoneの販売台数は7230万台で、売上は460億ドルだった。その後、2018年度には2億1800万台(最新の公式年間出荷台数)、売上は1650億ドルまで増加している。これほどの売上が見込める市場はほとんどないし、これほど画期的な製品が誕生することもめったにない。
アップルの製品戦略は、時間とともに進化していく非常に優れた製品やサービスを、ごく少数、世に送り出すことだ。この戦略を実現させるには、大きな収入源となる企業を買収するよりも長い時間を要する。こうした手法を、投資家たちが「評価」したり、「セクシー」だと考えたりすることはないかもしれない。しかし、さまざまな見地に立ってみれば、そのほうがリスクも少なく、長期的にみてもおそらくうまくいく。
Apple WatchとAirPods
アナリストたちは、アップルからは過去8年間イノベーションが生まれていないと話す。したがって、クックに代わる人間が必要であり、アップルを「次のレベルに引き上げてくれる」大手企業を、少なくとも数社は買収すべきだと彼らは主張する。アップルが新たな製品を出し続け、それが数百億ドルもの年間売上をあげていることは無視されているようだ。
また同社は、iPhoneを毎年アップグレードし続けているが、そうした技術的なハードルを乗り越えるのは容易なことではない。あっと驚くようなものを毎年発表することはできていないかもしれないが、新型チップセットや他の機能の導入にはかなりのプレッシャーがかかるうえに、ほんの少しの手違いや不手際があれば、株価に大きく響く。
アップルは、2015年4月に初代Apple Watchを発表した。Apple Watchのその後の売れ行きは上々で、スマートウォッチの代表的な存在となったものの、当時は、財務的には目立った変化はなかった。ただし、あれほど小さなフォームファクタに、コンピューターの性能と使いやすいインターフェイスを搭載するという技術的な挑戦を成し遂げたことには注目したい。また、初代は単に、Apple Watchシリーズのはじまりにすぎなかったことも忘れてはならない。技術の進化によって、デバイスの大きさを変えなくとも搭載できる機能は増えるだろう。
2016年12月にはAirPodsの第1世代が発表されたが、おおかたが無関心だった。ところが、2019年には最も「人気のある」ワイヤレスヘッドフォン・ブランドに選出されるまでになった。AirPodsも、あの小さなボディには多くの技術が凝縮されている。