──脇さんが誰よりも人の可能性を信じていること、また予期できない変化を心の底から楽しまれていることが伝わります。
自分の見えている世界は最小だし、1人でできることは限られています。言い換えれば、多くの人を巻き込み、掛け合わせることで、可能性は無限大に広がるのだと思います。そう認識できたら、どんな人のこともリスペクトしたり、自慢したりしたくなりますよね。
でも、世の中にはレッテルがたくさん存在します。例えば「ひきこもり」。外の世界と触れ合わない理由はさまざまなのに、ひとくくりにして語られしまいがちです。そこにはとても危うさを感じると同時に、概念化されたコト・モノを細やかに見ることで価値に変えることができるのにと、勿体なさも感じています。
とあるゲーム会社の社長と、ひきこもり支援を行うNPOの代表と一緒に飲みに行った時のことです。社長は「ゲームを好きな人が生み出すものは素晴らしい。皆、もっとゲームをしてくれたら良いのに」と話す。一方で、NPOの職員は「家でずっとゲームをしている子が多いんです。彼らが社会と関わりを持つために何ができるのだろう」と話す。
結局、3人で話しているうちに、「ひきこもりながらもゲームをやりきって、その先に社会との接点が生まれると良いね」という結論になり、ひきこもりの人たちに向け、ゲーム会社でのインターン採用を行うことになりました。
このように、価値の転換というのは、人と人との出会いによって生み出せたものなのです。たくさんの出会いの場をつくって、偶然が生まれる動きを増殖させることで、社会がもっと幸せになれる可能性があると思います。
あと、「一緒に何かをやろう」の力は凄いですよ(笑)。とりあえず面白いことをすると決めたうえで、お互いが持っている力を再確認し合う作業。これに意味があると思うんです。具体的な提案を出して、YESかNOをもらうだけの交渉には、あまり面白さは感じませんね。
──最後に脇さんが日頃から大切にされているマインドについて聞かせてください。
世の中で起きていることに「絶対的」な正義はありません。だけど、個々人の正義を決定づける価値観や信念は、大事に育てていく必要があります。
だから僕は究極のイエスマン精神であらゆる可能性を求めに行くし、どんな出会いにも意味があると思うし、それらに触れることで昨日まで正しいと思っていたことが揺らいでいくことにも意味があると思うんです。もがいてもがいて、その先にやっと、「今の自分がひねり上げた世の中への価値はこれです」と言えるものが見つかるのだと思います。
そして、それを後押ししてくれるのは、何より人との出会いです。今後はこうした出会いの場をいかに「日常化」できるかが重要になると考えています。まずは全国の公務員が出張の時にふらっと立ち寄れて、志あるさまざまな職業の人たちと出会える場、「よんななハウス」を都内につくりたいと思います。
脇雅昭(Masaaki Waki)◎神奈川県政策局未来創生担当部長 兼 政策局知事室政策調整担当部長。よんなな会発起人。1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省に入省。入省後に熊本県庁に出向、2010年に本庁に戻り、人事採用、公営企業会計制度の改正を行う。2013年から神奈川県庁に出向。広く深い人脈を生かして「よんなな会」を主宰し、国家公務員と47都道府県の地方自治体職員を繋いでいる。
連載 : #醸し人
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