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2019.10.22

熱海から世界へ 「食べられる」という名のファッションブランド

熱海にあるEatable of Many Ordersの直営店兼アトリエ「EOMO store」


そうして熱海の街で育んだ人脈の中から、ひとつの企画が生まれた。それが、『あたみコレクション』、通称『あたコレ』というファッションショーだ。10月27日に熱海の老舗ホテル「ホテルニューアカオ」のダンスホールで開催される。

ランウェイを歩くモデルは全員、応募で集まった総勢50人の熱海市民。市民にランウェイの歩き方を指導するウォーキング講師に、熱海在住でパリコレモデルとしても活動した田中レーヌ氏、音楽監督には熱海市生まれ・熱海市在住のミュージシャンでヒカシューというバンドのリーダーとして活躍する巻上公一氏、舞台監督には熱海の隣町の函南在住で「scale laboratory」という芸術団体を率いる川上大二郎氏という熱海にゆかりのあるメンバーを揃えて実施する。

二部構成のファッションショーの第一部が、幸治さんと洋子さんがディレクションするEatable of Many Ordersのショーとなる。市が主催する熱海芸術祭のプログラムのひとつとして助成金を受けており、より充実した内容にするためにクラウドファンディングでを実施しているという。


2012年に熱海の名所、起雲閣で開催したファッションショーの様子。

「熱海では、起雲閣や芸妓見番といった観光名所で独自のファッションショーを行ってきましたが、市民モデルの方々と作り上げるショーは初めて。第二部ではモデルさん自身が思い入れのある服を着てランウェイを歩きます。子供から高齢の方まで参加していただいていて、どんなショーが出来上がるのか今から楽しみです」と洋子さん。

「自分にとっては東京よりも熱海での方がアクションを起こしやすいという実感があります。規模は小さくても熱海ならではのことができる。こんなに身近な人たちと一緒にファッションショーをやることなんてなかなかできないですから。こういうイベントを通して、熱海の持つ多面性を知ってほしいですね」

インタビュー後、筆者は幸治さんと近くの焼き鳥屋へ。そこでもファッション談義は止まらない。熱海が抱える人材の豊富さ、熱海が人を受け入れる懐の深さ、そして熱海という街が持つ可能性をあらためて感じることができた。

連載:熱海の内側に帯びる熱「移住ライターのルポタージュ」
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文=高須賀 哲

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