デジタルとリアルの融合
最後に登壇した和田が紹介した作品は、デザイン部門でゴールドに輝いたグーグルの作品とデジタルクラフト部門、エンターテイメント部門、モバイル部門でシルバーに輝いたフォルクスワーゲンの作品だ。
グーグルの作品は、AIエクスペリメントの「クリエイティタビリティ」というプロジェクト。同プロジェクトは人間の可能性を広げるためのものづくりや入力装置をつくるというもの。和田は「インターフェイスの変化により、目を使って文字入力が可能になったり、肩の動きでコンピュータとコミュニケーションをとることができるようになった。こうしたことをグーグルというプラットフォームが取り組んでいることが面白い」と評した。
(写真)和田夏実
フォルクスワーゲンの作品は、自動車内でも電車内でもデジタルデバイスに夢中な子どもたちを、現実の風景をいかに楽しませるか、車に乗る体験を素晴らしくするかを扱った作品。見方によってはデジタル社会への警鐘とも受け取れる。
同広告では、アプリで位置情報と音声データを紐付け、たとえばトンネルに差し掛かる直前から「3,2,1」という音が聞こえる。同様に、ドライブ中の道路に沿って、物語が進み、何百ものストーリーが展開する。子どもたちにデジタルデバイスの画面だけでなく、外の世界に興味を抱かせるかがこの作品のポイントだ。
和田は「音だけというのがポイントです。音の価値を活かしたプロダクト。子どもたちは景色を見ながら想像を広げることができる」と解説した。
合計6つの受賞作品を識者3人の解説付きで上映された第一部は、あっという間に終了した。度肝を抜かれるようなアイディアの数々に、いつしか「広告の終焉」という言葉は頭から離れた。カンヌライオンズの受賞作品を見てみると、企業が打ち出すメッセージやアクションがより社会や消費者に近づいている。そこに「終焉」と呼ばせないヒントがあるのかもしれない。