2. 企業はキャンペーンの成功をどんな指標で測るべきか?
野村は、より本質的なエンゲージメントのあり方として「定性分析」を挙げる。
「例えばある投稿に対して、『いいですね』というコメントと、『実際に行ってきました』というコメントでは、後者のほうが行動変容まで促しており、より深く影響したといえます。そういったコメントの感情分析による定性的な評価も取り入れるべきです」
また、広告や公式アカウント上でインフルエンサーが投稿したコンテンツと、ブランド側で制作したコンテンツを比較し、評価する「ABテスト」もできる。インフルエンサーマーケティングは伝統的な広告・マーケティングの手法を採り入れながら、その投稿がよりシビアに評価、検証されるようになっていく。
エンゲージメントとマイクロインフルエンサーの次に知りたいのが、その活用方法だ。
「プロシューマー」を多面的に活用せよ
3. インフルエンサーの効果的な役割とは?
インフルエンサーの役割は、「出演」と「拡散装置」だけなのだろうか。世界の潮流を見てきた野村が未来像として挙げるのが、「プロシューマー」だ。 「プロデューサー(生産者)とコンシューマー(消費者)を一体化させた言葉で、生産者側にも携わる消費者を指します」と野村は言う。一連の事業活動の工程のなかでも、よりバリューチェーンの上流からインフルエンサーにかかわってもらうことで、本質的なインフルエンサーマーケティングが実現する。つまりインフルエンサーと企業による「協業」だ。
「消費者をリードする人、いわゆるアーリーアダプターであるインフルエンサーの思いを知ることで、企業が消費者の目線をもつことにつながります。完成した商品をインフルエンサーの力を借りて知ってもらう、販売する、以上がインフルエンサーマーケティングのようにとらえられがちです。しかし商品開発の段階や、投稿した後まですべて、インフルエンサーの方々に活躍してもらえる領域なのです。彼ら、彼女らの視点でマーケティングを行うほうが、圧倒的に精度が高い。そんな時代になっているのです」
インフルエンサーに対し、よく使っている購買手段や普段の消費行動について尋ね、実際の商品開発や販売チャネルに生かしていく。さらにキャンペーン後にSNSの投票機能などを使って、「このキャンペーンを見ましたか」「実際に新しい商品を買いましたか」といったアフターサーベイも実施することによって、バリューチェーンのなかでより効果的にインフルエンサーの力を借りることができる。
嗜好が細分化された時代、個々に深くアプローチするには前述のように「マス」的なアプローチでは難しく、デジタル、SNSが効果的である。だからこそ、「インフルエンサーによる、普段の自分の投稿のトンマナに合わせたストーリー性のあるプロモーション投稿は、広告とわかっていてもフォロワーをひきつけ、普段の投稿よりもエンゲージメントが上がることもあるんです」と言う。
フォロワーの期待にも応えながら、クライアント企業の課題やニーズにも向き合える「クリエイティブディレクター」的な能力を備えたインフルエンサーが生まれているのだ。
ユーザーのリテラシーも格段に向上している。この投稿は果たしてプロモーションなのか、否か。インフルエンサー自身がその商品のよさを心から実感し、心から薦めようとしているか、それとも与えられた宣伝文句をなぞっているだけなのか。絆ともいえる、フォロワーとの間のハイコンテクストなコミュニケーションのなかで、インフルエンサーたちは広告案件であっても誠実さが問われている。