ビジネス

2019.10.15

インフルエンサーは「拡散装置」ではない。プロシューマーとして多面的に活用せよ

indaHashカントリーマネジャー、ビジネスデザイナー、マーケティング戦略アドバイザー 野村肇(写真=小田駿一)


インダハッシュが企業に選ばれる理由のひとつとして、主にマイクロ層からミドル層のインフルエンサーを多数抱えている点と、インフルエンサーが配信したオリジナルコンテンツの「二次利用」が可能であるということが挙げられる。

インスタグラム、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブ、スナップチャットなどと連携しているが、最も多いのがインスタグラム上でのキャンペーンだという。インスタグラムは本投稿に加えて、ストーリーズという、より気軽に投稿できる舞台ができ、企業にもインフルエンサーにとってもビジネスチャンスが拡大した。

企業側では考えもしなかった切り口や表現で制作されたインフルエンサーのコンテンツを、企業が公式アカウントや自社サイトなどに活用できる。インフルエンサーがもつ意外なクリエイティビティに、企業が期待する──。それが当たり前の時代になろうとしているのだ。

こんな事例がある。クルーズの旅を提供する英国の海運会社キュナードはインダハッシュ経由でインフルエンサーを募り、北極圏への「写真の旅」を企画した。インフルエンサーたちは船上、または寄港時に陸上で思うままに写真や動画を撮影し、インダハッシュの仕組みを使ってアップする。

その投稿は英国内の10のショッピングモール内に設置されたサイネージに次々とリアルタイムで映され、「いままさにクルーズで旅をしている感動」が現実世界でも同時に共有された。インフルエンサーのリアルな体験を、デジタルでリアルタイムにシェアする、没入感のあるキャンペーンとなったのだ。



ブランドは「消費者」のもの カスタマーボイスを聴け

野村は最後にこのような問いを投げかけた。「ブランドは誰のものだと思いますか」。そしてこう述べた。「ブランドは企業のもの、ブランド自身のものだと思っている方も多いかもしれませんが、もはやブランドは消費者のものなんです」

私たちはこういうブランドです。こういうタレントを使って、こういうメディアでメッセージを投下しますから、消費者の皆さん、理解して買ってください──。こういった、100%企業側がコントロールできる「投下型」のコミュニケーションは、なかなか通用しなくなってきている現実がある。企業にとっては厳しい現実かもしれないが、逆に言うと、ブランドや商品のイメージやレピュテーションは、いまや消費者が決めるのだ。

「SNSの力で、いまや『ブランドボイス』より『カスタマーボイス』のほうが大きくなってきている。中国でインフルエンサーマーケティングが進んでいる理由はそこにあります。中国の消費者は企業をあまり信用せず、人を信用しています。道先案内人的に、『この人が言うなら間違いない』と商品が売れていく。圧倒的に消費者の力のほうが強いんです」

消費者をリードする「プロシューマー」的インフルエンサーたちの可能性を信じ、いかにバリューチェーンの上流から下流に至るまでさまざまな場面で「協業」していけるか。この問いかけこそ、企業のあり方を問う、重要な論点である。


indaHash◎2016年に創業したポーランド発のテクノロジー企業。日本を含めた世界90カ国で95万人以上のインフルエンサーネットワークをもち、ブランド企業とインフルエンサーやオピニオンリーダーをつなげ、両者にとってフェアトレードができる場を提供する。ブロックチェーンとAIをベースとしている。これまで3000以上のブランドキャンペーンの実績があり、国内でも自動車、エアライン、消費財など幅広い領域のインフルエンサーマーケティングを手がけている。

野村肇◎indaHashカントリーマネジャー、ビジネスデザイナー、マーケティング戦略アドバイザー。ベンチャー創業、米ユニコーン企業の日本およびアジア圏のビジネス開発などを経て、2018年にindaHash東京オフィスの立ち上げを行う。大手ブランドを中心にデジタル変革からマーケティング戦略の策定、実行まで幅広く支援。

文=林亜季|写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 真のインフルエンサーとは何だ?」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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