ビジネス

2019.10.15

「スモール・ジャイアンツ アワード」関東大会で明らかになった新しい価値「地方での連携力」

大賞に選出された協同商事 朝霧重治 代表取締役社長(写真右)とトロフィーを授与する内田研一 審査員長

そのとき、会場には、祝福の拍手と驚きの溜息が入り交じっていた。「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」関東大会、埼玉県川越市の協同商事が大賞に輝いた瞬間だ。同社は「COEDO」のブランドで、ビールを製造、販売。日本発のクラフトビールとして国際的なコンテストでも数多くの賞を獲得し、国内のみならず世界20カ国で愛飲されている。

拍手はもちろん、ビールという身近な存在で、世界へと羽ばたいた埼玉県の小さな会社に対しての称賛が込められてのもの。一方、驚きのほうは、同社がこれまでグランプリに選ばれてきた小さな企業とは、やや趣の異なる「ジャイアンツ」だったからだ。

食品製造の会社が初めて大賞に選出

「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」関東大会は、9月30日、東京・日本橋の室町三井ホール&カンファレンスで開催され、大賞は、8月に行われた関西大会と同様、会場に詰めかけた一般参加者の投票で選ばれた。

これまで、このアワードのグランプリは、第1回が西陣織の技術を応用したIoTウェアの「ミツフジ」、第2回ではITを駆使した24時間無人稼働の生産管理システムを持つアルミ加工の「ヒルトップ」と、どちらかというと時代の最先端をいく小さな大企業が選ばれてきた。

第3回である今回のアワードは、関西大会、関東大会、その他の地域(北海道、東北、中部、中国、四国、九州・沖縄)の大会を経て、最終的に全国大会でグランプリが選ばれる方式だが、たとえ関東大会といえども、ビールという食品製造の会社が選出されたのは、かなりの驚きをもって迎えられたのは事実だ。

もちろん、いまや「小江戸」として多くの観光客が集まる埼玉県の川越にあって、ひたすらクラフトビールづくりに情熱を注いできたと語る朝霧重治社長の明快なプレゼンテーションと、ビールという身近な存在が会場の参加者たちの多くの支持を集めたと思われるが、そこには、第1回や第2回のグランプリ受賞の企業に見られた最先端の技術やシステムはない。

では、何が協同商事を「ジャイアンツ」たらしめたのか。そのヒントは、大賞発表の直前に行われた特別セッション「アドバイザリーボードが語る『私が注目する地域と企業』」に隠されていた。
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文=Forbes JAPAN編集部 写真=大星直輝

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