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フォーブスジャパン編集部


展示室を塞いだ壁に書かれた声

「表現の不自由展・その後」は再開後も、抽選に当たった人しか見られないが、その展示室の外でも、中止後の大きな動きを感じ取ることができた。トリエンナーレに参加する世界各地のアーティストが、全ての展示の再開を目指すプロジェクト「ReFreedom_Aichi」によるアクション「#YOurFreedom」だ。

表現の不自由展の展示室の入り口を塞いでいた壁で、訪れた観客自身が「自由を奪われた経験」や「日常の中で見つけた差別や偏見」などをカードに書いて掲示したものだ。不自由展の出展作家によるステートメントも貼られ、切実な思いを感じることができる。

自由を奪われた経験には「自分がLGBTだということ。普通の結婚がしたかった」、日常の差別や偏見には「近所に引っ越してきた中国人が、あまり日本語を話せないため、近所の人たちが名前ではなく『あの中国人』と呼ぶこと」など、身の回りのエピソードが記されていた。


表現の不自由展の展示室入り口を塞いでいた壁「#YOurFreedom」のメッセージを読む人たち

「展示再開」と入り口に書かれたある展示室を覗くと、色鮮やかな韓服のインスタレーションに目を奪われた。イム・ミヌクの新作《ニュースの終焉》だ。中に入ると、日本のメディアではなかなか流れない映像が映る大型ディスプレイに、戸惑う人もいるかもしれないと思った。


イム・ミヌクの《ニュースの終焉》内に展示された鮮やかな韓服

その映像は、北朝鮮の金正日総書記と韓国の朴正煕元大統領の葬儀の映像を並列させたものだ。2つのコミュニティの説明しがたい悲しみと、正しいようで矛盾した背景に疑問を投げかける狙いがあり、「分断の時代」を示している。大型の画面には、子供からお年寄りまで、泣き崩れる人や、悲しそうな表情が次々と映し出される。画面に映った彼らは、どんな気持ちで泣いているのだろう?本心はどうなのだろう?と、疑問が湧いてくる。

時代を切り取り、歴史的背景を示唆する作品はほかにもあった。とりわけ、アジアの作品が多い。ユェン・グァンミンの《日常演習》という映像作品では、真昼の台湾の都市の姿をドローンで捉えている。そこに人の姿はほとんどなく、道には車やバイクも見られない。これは1978年より続く防空演習を捉えたもので、毎年春に日中の30分間、人々は屋内へ退避し、交通も制限されるという。異世界の都市のように美しくも見えるこの映像は、合成されたものではなく、現実なのだ。

文、写真=督あかり

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