ビジネス

2019.10.13

稲木ジョージが、PRメソッドの集大成を賭けて挑む「新境地」

稲木ジョージ(写真=小田駿一)




消費者はもう、気づいている

ジョージはなぜ自らブランドを立ち上げたのか。こう語った。

「自分がやってきたPRの集大成、PRメソッドをそのまま注入して、なおかつ、どうしたら他のブランドと差別化できるか。トライアンドエラーをやってみたいと思った」

ジョージによると、ブランドがインフルエンサーをイベント等に起用して拡散をはかるキャンペーン手法は、国内では2018年がピークだった。「消費者はもう、気づいていると思いますよ」。欧米はすでに次のフェーズに進んでいるという。次のフェーズとは、と尋ねると「それ言っちゃうと僕の仕事なくなっちゃうんですけど」とおどけた後、「やっぱり、差別化が大事でしょ」。そして、こう話した。

「デジタルって、やった瞬間にその手法が古くなるんだよね。ファッションの世界では2度同じことはできない。『あのポーズってあの人のマネじゃない?』ということまで、すぐバレてしまうんですよ」


星座をモチーフにした独特のデザインのピアスも人気だという(MILAMORE提供)

「今の時代、いい商品を作って終わり、ではないから」。どういうことか、と尋ねると、ジョージはこう続けた。

「リップスティックが毎月どれだけ新発売されていると思う? どんなにいいリップを作っても、みんなが朝起きて『よし、あのブランドのリップを買いに行こう』とはなかなかならない。他の商品と何が違うかを示して、Desirable(魅力的)なブランディングをしないと、もう誰も買わない。そういう時代なんです」

2つの顔。相容れないようで、シナジーや可能性に満ちている

起業家としての自分がすごく楽しい、と話す。デジタルPRコンサルタントとして、またジュエリーブランドのクリエイティブ・ディレクターとして。かたやクライアントありきのビジネス、かたや、自分の中のクリエイティビティやメッセージを形にする仕事。全く相容れないようで、互いに相乗効果をもたらしている。

クライアントから常に新たなアイデアやこれまでにない切り口を求められるなか、MILAMOREで他のブランドとの差別化や独自のブランディングを考えながら、溢れ出るアイデアやインスピレーションをどんどん形にしていく。まだ見ぬクライアントニーズをつかむために、自分で最新事例を生み出し、ファッションの最前線を切り拓いていく。先にPR的なアウトプットを考えてから、デザインに落とし込む。ジョージならそんな逆算もできるのだ。

トラディショナルなPRの世界からは、自らがブランドを手がけ表舞台に立つことについて、厳しい視線も注がれている。一方でジョージの熱っぽい語り口には、ひたすら憧れて追いかけて携わり続けてきたファッションビジネスの将来を自分が担っていくんだ、という気概がにじむ。

所属や肩書きや従来のビジネスの常識にとらわれない、個の時代の新たなビジネスパーソンのあり方とも言えるのではないだろうか。

「今の時代、1000人いたら、1000人は絶対OKしない。全員を幸せにはできない。900人に『好き』と言われる代わりに100人から『嫌い』と言われる覚悟を持つ。それぐらいのリスクを覚悟してやっていかないと、いいものは絶対できないと思うんですよね」

デジタルPR・稲木ジョージが「インフルエンサーのインフルエンサー」になるまで


稲木ジョージ / GEORGE INAKI ROOT◎2010年大学卒業後、上京。アメリカンアパレルの販売員、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を経て、PRに。14年に渡米、NYを拠点としフリーランスのデジタルPRとして活動。16年、グローバルブランドの日本市場へのローカライゼーションに特化したデジタルPRコンサルティング会社George RootLtd.を設立。ファインジュエリーブランド「MILAMORE」の共同設立者兼クリエイティブディレクターも務める。

稲木ジョージが来日。サイン会付、トークイベントを10月23日(水)に開催します。
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文=林亜季、写真=小田駿一

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