2017年1月に独立し、企業のPRコンサルティングとPR活動のサポートをおこなう「A Story(エーストーリー)合同会社」を設立。そしてこの7月に上梓した著書のタイトルは、『アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割』だ。
ベンチャーから大企業まで、さまざまな企業を広報活動からサポートする小西氏に聞いた。
広報と広告は「まったく別」
──まずは元広報本部長も務めたアマゾンを退社して、独立した理由をおしえてください。
中小企業は、日本企業の9割ほどを占めるのに、知られていない企業があまりにも多いという思いがありました。なかにはスタートアップやベンチャーですごいビジネスモデルを持っていたり、志の高い社長さんがいたりして、必ずや芽が出るに違いないという会社も数多くあります。
でもとくに若い企業は、それを世の中に知らしめる手段が確立されていないことも多い。まずはそんな会社や経営者を、広報でサポートして日本をより元気にする活力になってもらいたいというのがひとつです。
もうひとつは、広報という仕事そのものの認知度の低さです。25年以上広報の仕事に携わってきて、とくに日本では、この仕事が評価されていないのではないかという思いをずっと持ってきた。独立後も広報業務のオファーがあった企業にその理由を聞くと、「本当は広告を打ちたいけれど、お金がないから」、「広報ならお金がかからなそうだから」と言われることもありました。
実際は広報と広告はまったく別の物で、その企業の事業戦略によって、どちらをやるべきかが変わってきます。広報はひと言で言うとすると、「社会と信頼を築いていきながら、会社を理解してもらってロイヤリティを高める」のが仕事。広告と違って結果が出るまでには一定期間がかかります。でも企業の活動には欠かせないものです。
広報の重要性を啓蒙していったり、広報の人材育成にも携わりたいなど、これまで広報に携わってきて生まれたさまざまな思いが、独立の後押しをしてくれました。
──現在、クライアントには、大企業からスタートアップ、ベンチャーまでいらっしゃるとのことですが、日本企業に感じている特徴はありますか?
広報に対する認識は、アメリカに比べるとまったく違いますね。例えばアマゾンでは、広報は事業戦略に追い風を吹かせたり会社を守るために、間違いなく必要な部署です。
アマゾンの特徴は、経営者からのキーメッセージを、クドいほど発信し続けるところ。例えば「顧客中心」、「Still Day One(毎日が初日)」、「品揃え」、「低価格」、「利便性」などのキーワードがコミュニケーションの諸機会で繰り返し発信され、社内にも社外にも浸透しています。アマゾンのサービスは金太郎アメのようにどこを切ってもそれらのメッセージが息づいていて、その発信を担う重要なポジションが、広報という位置づけです。