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あの天才ベゾスでも、ものすごく練習する

そして、そんなベゾスを見て、トヨタで働いたことがある人がこう助言したと話は続きます。「ベゾスさん、私は部屋を清潔に保つことは賛成です。しかしなぜホウキで掃いているのですか? どうして汚れのもとを取り除かないのですか?」と。

光景が目に浮かびますよね。そんなふうにベゾスは、仕組み化の重要性をわかりやすく説いていくのが得意です。その発信力はまさに天才的なのですが、実はベゾスの受け答えも、準備と練習という努力の上に成り立っていることが多かったようです。

トップの記者会見が決まると、われわれ広報は数え切れないほどの想定QAを作って本人に渡します。ベゾスの場合、そんな想定QAの言葉通りに受け答えをすることがめったにないのですが、だからといってそれは決してアドリブで答えるわけではないんですね。なんと1週間も前から、彼なりの言葉を使い、問答を練習しているのを見たことがあります。

彼ほどの天才でも、社外へ向けた発信には、事前の入念な準備が必要ですから、普通の人なら準備を怠ってはいけない。丸腰で会見や取材に望んでも、うまくいきません。なかには、「部下が作ったパワーポイントを読むだけだから練習は要らない」と言う経営者の方もいますが、それではメッセージは伝わらないでしょう。とにかく発信には、準備と練習が不可欠です。

私ですか? もちろんベゾスのような天才ではないので、気になったフレーズを見かけたらスマホのメモに書き留めて、何かを発信するときにいつでも使えるようにしています。例えば最近では、バスケットボールの八村塁選手の快進撃を「コロンブスが新大陸を発見したくらいすごい」と表現していた評論家の方がいたんですよ。彼のすごさが、リアルに伝わってきますよね。はい、すかさずメモしました。

──ご著書には、会見や取材などの準備のときに忘れてはいけない、「メディアに必ず聞かれる4大質問」という項があります。ご自身が自著を広報するとして、4つの質問にはどんなふうに答えますか?

自分の本についてですか……考えたことがなかったですね(笑)。まず「メディアに必ず聞かれる4大質問」のひとつは、「なぜ今なのですか?」という質問ですよね。

先ほどもお話したように、ベンチャーにスポットが当たって評価される機会を作れればと独立したのですが、ここ1~2年はとくに、ベンチャーの機運が高まっていることを感じています。例えば昨年は内閣府も、大手もベンチャーも含めて国内のオープンイノベーションを表彰しています。一方で私のクライアントからは、PRの立ち上げ方わからないなど、悩みを聞くことが増えています。そこで私の経験を広くみなさんの役に立ててもらうなら、今でないかと。

2つ目は「何が新しいのか?」という質問です。PRや広報をやっている人に向けた座学的な本はこれまでも素晴らしいものがたくさん出ていますが、PR担当者はもちろん、経営者はじめビジネスパーソンにも読んでほしいと思って書いた本です。なぜならPRは、PRの部門だけでできるものではないからです。

あくまで経営者がいて、経営ゴールやプランがあり、その追い風のために存在する。なのに過去に、経営者のための広報本は見たことがなかったですね。ここは新しいと思いますよ。

続いて「何がほかと違うか?」。小さなスタートアップだったところから始まって、巨大企業に至るまでのプロセスを支えてきた広報ってなんですか?というリアルな話や、今日から使えるハウツーも満載した本。ここは差別化の武器になるかもしれません。



最後は、「なぜ弊社(小西)なのか?」。これは私が歩んできた分野と関係しそうです。アマゾンでは本から消費財からサブスクリプションから、いろんな分野の広報立ち上げの場に立ち会ってきた。日本も海外も両方経験して、それも25年以上という経験があります。そんな私だから書けた話もたくさん出てきます。

何歳まで働くか、ですか?そうですね。80歳くらいまでは行きますよ。PRの最年長を目指したいですね(笑)。悩める広報パーソンはもちろん、会社を始めたばかりの経営者の方、そして働くすべての人の役に立てばと書いた本です。誰もが必ずやストーリーを持っています。もしなければ今から作ればいい。すてきなストーリーを発信してほしいですね。


小西みさを◎ソフトバンク、セガなどで10年以上の広報経験を経たのち、アマゾン黎明期の2003年、広報責任者に就任。その後13年にわたり、多様なPR手法やメディアネットワークを活用し、急成長期のアマゾンをブランディングする。2017年にPRコンサルティング会社「A Story(エーストーリー)合同会社」を設立し代表に就任。ベンチャーから大企業まで、幅広くサポートする。著書に『アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割』(宝島社刊)

構成・文=福光恵 編集=石井節子

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