ビジネス

2019.10.12 12:00

デジタルPR・稲木ジョージが「インフルエンサーのインフルエンサー」になるまで

稲木ジョージ


NYで起業、ジョージの「文脈力」
advertisement

奮闘の末、あるブランドの無給でのインターンに入り込んだ。その後、フリーランスを経て徐々に案件の相談が舞い込むようになり、16年に「GeorgeRoot Ltd.」を立ち上げた。
 
デジタルPRコンサルタントとして数々のラグジュアリーブランドのイベントやデジタルキャンペーン、リブランディングを手がけていく。グローバルのキャンペーンの趣旨を汲んだうえで、日本にローカライズさせる。企画の文脈づくりがジョージの武器だ。

null
NYの自宅にて

例えば17年のカルバン・クライン(CK)の下着を訴求するキャンペーン。世界では「#mycalvins」(私のカルバン)のハッシュタグで多くのセレブリティが自身の下着姿をインスタグラムにアップし、ムーブメントとなっていた。さて、比較的露出を好まない日本人に、どうフィットさせるか。
 
ジョージはふたつのハッシュタグを考案した。「#じつはCK」(実はさりげなくCKの下着を着けています)、「#みせるCK」(大胆にCKの下着を見せて/魅せています)。
advertisement

必ずしも下着を見せる必要はなく、自分のタイプに合うほうのハッシュタグを使って自由に投稿してほしいと、インスタグラム上で参加を促した。著名人の参加も功を奏し、多数の投稿がなされた。実際は意外と「#みせるCK」が多かった。無理なく参加できる文脈づくりが、日本のユーザーを大胆にさせたのではないだろうか。
 
デジタルPRに重要な能力として「想像力」を挙げる。「PRはおもてなしの仕事。究極的に相手の望むことを想像することだと思う。ブランドさんのことを、そのヘリテージも含めてしっかり把握し、課題やニーズを想像する」仕事を語れば、実はアナログである。

アナログからデジタルへの劇的な変遷を、成長期に身をもって体感している自分たちの世代を、ジョージは「ゴールデンエイジ」と呼ぶ。子どものころは手書きの手紙や自宅の電話を使ったアナログなやりとりを経験。中高で携帯電話が普及し、大学時代にスマホが登場した。「10年後、僕らの世代がリーダーになる。デジタルの便利さと、アナログな人間味を微調整できる世代だからこそ強いんだ」

ジョージが決めていることは、毎年、前年の自分を超越していくこと。「去年の自分を『塗り超える』」という言葉を使う。アップデート感がいかにもデジタル的である一方で、アナログ的なウエットさも兼ね備えている。
 
本物のインフルエンサーとは、「予報者」である

インフルエンサーなる現象を牽引してきたジョージに、「本物のインフルエンサー」とは何か、その定義を聞いてみた。一言、「Forecaster」。予報者という意味だ。

「トップインフルエンサーはフォロワーが多い人ではなく、『予報者』なんです。次に何が来るか、常にアンテナを張って予測して、発信する人です」
 
これまで予報者として社会や消費者にとって一定の信頼を獲得していたメディアの役割の一部が、SNSの普及により個人に移ったとも言えるだろう。
 
国内最多である渡辺直美のインスタグラムのフォロワー数は9月1日現在、895万を数える。世界一を誇る読売新聞の発行部数が約800万部であることから鑑みても、そのリーチはマスメディアに匹敵する規模に成長したと言えるのではないだろうか。
次ページ > ジョージの「爆速」人生、夢の叶え方

文=林 亜季 写真=アーロン・コトフスキー

タグ:

連載

#インフルエンサーの研究

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事