子どもの将来年収はどうなる? 金融教育をいまからすべき理由

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子どもに金融教育の観点から話をするというと、多くの親は歓迎してくれるのだが、いまだに「子どもにお金の話なんてしないでください」、と言ってくる親もいる。

「お金の話をする人は卑しい」という表現は、1700年ころの文献にも見られるそうで、300年以上もその空気の中で生きてきた日本人にとっては、当然の反応なのかもしれない。

しかし、この数年で日本の経済環境は変わり、世界における日本の存在感にも変化が表れている。ゆえに、これまでの価値観を持ち続けるのは危険だと考える。今回はデータも見ながら、子どもに金融教育をすべき理由を書いていきたい。

日本人は経験しながら学習している

金融広報中央委員会が2019年7月に発表した『「金融リテラシー調査2019年」の結果』には、非常に興味深いデータが揃っている。金融教育の文化がない日本においては、数少ない調査結果だ。金融リテラシーにかかる正誤問題についての年齢層別の正答率はとても示唆に富んでいる。


※各年齢層の右側(色付)が 2019 年調査、左側(白抜)が 2016 年調査
出典:金融広報中央委員会『「金融リテラシー調査2019年」の結果』図表6


この正誤問題は家計管理、生活設計、金融知識(金融取引の基本、金融・経済の基礎、保険、ローン・クレジット、資産形成)、外部の知見活用というカテゴリーで設計されているが、上図を見れば明らかなように、年齢を重ねるごとに正答率が上がっている。

日本では金融教育の文化もプログラムもないことを考えると、日本人は社会人になってから、さまざまな体験を通して各自が自然と金融の知識を身に付けていると考えられる。18~29歳の正答率が50%を下回っており、30代になる際に正答率が大きく上昇していることからも、この仮説は力強いものといえるだろう。

筆者が親子向けの金融教育の話をするとき、当初は親向けと子ども向けで資料を分けていたが、明らかに子ども向けのセッションのほうが親にもウケがよかったという経験から、最近は親も子どもも同じ資料を使って話すようになったのだが、日本では語彙力の違いこそあれ、金融知識には大人も子どももそこまで差はないのだ。ゆえに、子どもと同等の知識のまま社会に出て、少しずつ経験をしながら学んでいるのだろう。

金融教育=資産運用? 

日本でも多少は金融教育の必要性を説く声も耳にするようになってきたが、個人的に違和感を抱くのは、ほとんどが「金融教育」を投資や資産運用と関連付けている部分だ。そもそも、筆者は経済学や会計、統計などをベースにして、お金の歴史、使い方、貯め方、増やし方など幅広い内容を金融教育と定義づけている。
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文=森永康平

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