下表は前出の金融リテラシー調査内で発表されている表だが、リスク性資産の購入経験がある人は全体の3割程度だ。つまり、投資や資産運用というのは多くの人にとっては馴染みのない行為である。
出典:金融広報中央委員会『「金融リテラシー調査2019年」の結果』図表8
よって、金融教育を投資や資産運用として話してしまうと、自分には関係ないことだとか、危険なことではないか、というこれまでの旧態依然としたリアクションを引き起こしてしまう事になる。金融教育にとって投資や資産運用は一部に過ぎず、まずはお金の歴史や意味、使い方など身近な話やなるほどとなる蘊蓄(うんちく)の紹介から入ることがよいだろう。
金融の知識は自分を守る
この資料には他にもさまざまな結果が載っているのでいくつか紹介しよう。下図は、正誤問題の正答率と望ましい金融行動をとる人の割合を属性別にプロットしたものだが、やはり金融リテラシーが高い人ほど、望ましい金融行動をとる割合が高く、かつ年齢や社会人経験を重ねるごとにその割合は増えていくことが分かる。
しかし、金融教育を受けたことがあるという属性は、その他の属性と比較すると、格段にリテラシーも望ましい行動をとる割合も高くなっている。これはつまり、幼少期から金融教育をしていけば、社会に出る時点で現在の社会人歴10年以上の人と同じレベルにまで持っていくことができるのだろう。
出典:金融広報中央委員会『「金融リテラシー調査2019年」の結果』図表13
また、金融リテラシーは年収と金融資産の額にもそれなりの相関関係がみられる。親の年収や学歴が子どもの学歴などに影響を与えるという話はよく耳にするが、金融リテラシーが高い人ほど年収が高く、金融資産も多く持つ傾向にあるという結果が下図から見てとれる。
出典:金融広報中央委員会『「金融リテラシー調査2019年」の結果』 図表29
私たちは資本主義社会を生きており、お金と無縁でいることはできない。この記事を読んでいる方も、朝起きてからいまに至るまでにお金を使っていないだろうか。電車に乗ったり、コーヒーを買ったり。これは大人に限らず、子どもでもお小遣いやお年玉をもらったり、それを使ってお菓子やおもちゃを買ったりするなど、お金とは早々に関係を持つはずだ。
これからは日本でもどんどん格差が拡大していくが、そのような世界で自分を守れるのは自分だけである。お金の知識がないままに生きていくことは、運転の仕方も分からず、目をつぶったまま自動車に乗って道路を走るようなもの。大人であれば学ばないのは自己責任で片づけてしまってもいいが、子どもにもその発想を押し付けるのはあまりにも可哀想だ。ぜひ、日本でも本当の金融教育が普及すればいいと思うし、その一助になれればと思っている。
連載:0歳からの「お金の話」
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