プロジェクトエコノミーとは
報告書はプロジェクトエコノミーの定義について、高スキルのフリーランスが従事し、明確な終点がある仕事としている。プロジェクトは多くの場合、数週間から数カ月続く。これは、特定の顧客に対して繰り返し同じ業務を行うことが多いギグワークとは対照的だ。
プロジェクトエコノミーでは高いスキルが要求されるため、これに従事する人はギグエコノミーよりはるかに少ないと思うのは筋が通った考えかもしれない。しかし現実は全く異なる。報告書では、プロジェクトベースのフリーランサーはギグ労働者の5倍存在することが分かっている。プロジェクトエコノミーは、英経済全般をけん引しているのだ。
報告書は「標準職業分類(SOC)1~3のフリーランサーが英経済に貢献する1400億~1450億ポンド(約18兆~19兆円)の経済産出量のうち、プロジェクトベースのフリーランサーは73%に相当する1040億ポンド(約14兆円)を占めている」一方で、「フリーランスのギグエコノミーが占めるのはわずか14%の200億ポンド(約2兆6000億円)で、残りはポートフォリオやその他のフリーランサーだ」と指摘している。
この規模は、プロジェクトベースの仕事をこなすフリーランサーの収入に反映されている。こうしたフリーランサーのうち210万人が、同等の従業員と比べて平均で倍の収入を稼いでいた。このフリーランス労働人口はマネジャーやディレクターなどから成り、フリーランス経済で最も生産的な一端を担っている。
経済をけん引
プロジェクトベース労働者の規模と性質は、こうした労働力が現代の知識ベースの経済をけん引する上で重要な役割を果たしていることを浮き彫りにしている。報告書では、企業が高スキルのフリーランサーたちを活用し、アジャイル(敏捷)かつ効果的に労働力を拡大しつつ需要の増減を管理できるようになっていることが示されている。
報告書では、プロジェクトベースの仕事の主な例として、研究開発やイノベーション、新技術の導入、コーポレートベンチャーなど6つの形を特定している。こうした仕事の多くは、プロジェクトベースの仕事のため特別に設計されたデジタルプラットフォームや企業を介して行われる。
フリーランサーはこうしたプラットフォームを通じ、英経済の健全性に大きな貢献をもたらしていた。同報告書は英国限定のものだが、著者らは報告書の調査結果が他の先進国経済にも当てはまると考えている。
ギグエコノミーを取り巻く議論は、先導役を果たす人の認識に合わせて過度に簡略化されてしまうリスクがある。ギグベースの仕事の重要性が過度に強調され、あたかも労働市場の中核を担っているかのようにみなされないよう、今回のような報告書を通してフリーランス経済のより広い側面に光を当てることが重要だ。