車のシートが欠勤の原因に? 「腰痛」による英国の経済損失とは

あなたのマイカーの運転席は、ちゃんと支えるべきところをサポートしてくれているだろうか? 長距離クルージングで腰が痛くならないだろうか? それとも、腰痛とは無縁だろうか……?

腰痛は今や日本の国民病と言えるが、実はカーシートから発生する腰痛は海外でも大きな社会問題になっている。今回は英国の話を中心にお伝えしよう。

ボルボ・カーズ英国の調べによると、カーシートから来る腰痛が英国の経済に何億ポンドもの悪影響を及ぼしているそうだ。英国の3200万の成人就業者のうち、クルマで通勤したり、仕事としてクルマに乗ったりする率は68%。ボルボがその条件を満たす2000人を対象に行ったアンケートによると、シートからくる腰痛で2日間以上休んだ人は12%、4日間以上は13%という結果だった。

さらに、5日間休んだのは5%、それ以上休んだという人も5%で、その人数は220万に相当する。これにより英国経済が被る損失は1兆円以上になると推定される。

また、約3分の1が、シートの問題からくる腰痛の治療のため、医者や物理療法士にかかっていることもわかった。それが英国の国民保険NHSに要するコストは約250億円にのぼる。

正直なところ、この話を最初に聞いた時は驚いた。ボルボ自らこんな大変なアンケートを行うと、自分たちの作るシートが細かくチェックされ、批判されるのではないか。でも、このスウェーデンの会社はシートに自信を持っている。運転席の構造やバネがしっかりしており、人間工学を考えた柔らかいフォームを使用しているため、どの人が座っても対応できるという。余計なステッチをつけてシートが必要以上に硬くなることはまずないという。

実は、日本のカーメーカーは最近、人間工学を考慮したシートのデザインに移行しつつある。ここで腰を一番痛めやすいシートを提供してるメーカーの名は控えさせてもらうけど、最近、特にシートのデザインに力を入れて素晴らしい運転席を作り上げたのは、マツダ、ホンダなど。海外では、BMWやジャガーがあげられる。

僕が特に関心したのは、マツダがマツダ3に採用した「骨盤を垂直に保つことが良い姿勢の維持に繋がり、腰痛を最小限に抑える」という概念だ。進化させたシートと、さらにサポート力の増したクッション、それに特に重要なシートの座面と腿のサポートが、骨盤の位置を垂直に保つことによって腰をしっかりと支える。さらに、コーナーでは頭の動きを抑制する。

クルマ業界において、「骨盤」という言葉を最初に聞いたのはマツダからだったけれど、この頃多くのメーカーが言い出している。シートのデザインがこれからどんどん良くなってくると期待してて良いだろう。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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文・写真=ピーター・ライオン

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