人生で最もおいしいソーセージ、パリの空気が充満する北駅近くの店

何度でも食べたい「レ・ザルロ」のソーセージ&ジャガイモのピュレ


私はソーセージが大好きで、豚肉加工品店でも、マルシェに出店している農家のスタンドでも、自家製とあれば、すぐに買う。ソーセージが自宅の食卓に上る頻度も高いほうだと思う。それなりに食べ比べ、自分好みのものを選び抜いてもいる。

そのなかにあって、レ・ザルロのソーセージは、「私の人生で最もおいしいソーセージ」というポジションをまんまと奪い取った。豚の肉汁を味わうには最高の加工法ではないか、そう思うくらいジューシーで、食べ応えのある肉質に、これはきっと肉を挽いているのではなく、叩いているのだと思っていた。それに、少しレバーを加えているような深みもある。

シェフのトマに訊いたら、レバーを入れてはいなかった。使うのは、豚の喉肉と肩肉。ただ、豚バラ肉を干したものと、その皮も加える。肉も叩いているわけではなく、挽いているらしい。ならば、その粗さは秀逸だ。あとは焼き加減もあるのだろう。何度食べても、おいしさに唸る。

だからと言って、この店でソーセージだけを食べ続けるのは、勿体なさ過ぎる。先日、2回転目が始まる頃の、空席が出そうな時間にふらっとランチに行ったら、すでにイカを使ったメインしか残っていなかった。

ムール貝、ざる貝とともに輪切りにしたイカを、コニャックと白ワインを加え甲殻類のフォンをベースにつくるトマトソースで和えたそれは、思わず鼻が大きく膨らんでしまうほどにおいしくて、おまけにピラフが添えてあったものだから、ソースも余すことなく、きれいに平らげた。


絶品だったイカとムールのアルモリケーヌソース

あんなにシェフが、肉料理がおいしそうな顔つきをしていながら、魚介も引けを取らないくらい素晴らしいとは参ったなと思い、次に行ったときには、前菜に鯖のマリネをとった。これも、オレンジとコリアンダーシードを纏った爽やかで香ばしいひと皿だった。

初訪問のときに驚かされた前菜は、鯖のマリネ然り、その後も毎度嬉しい発見があるのだが、最近のいちばんのヒットは、砂肝とポテトのサラダだ。なんと、ゆで卵入りのポテトサラダにスライスした砂肝が合わせてあった。食いしん坊の心を、ぐっと掴んでくるのだ、このシェフの料理は。


ポテトサラダと砂肝の組み合わせにニンマリした前菜
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文=川村明子

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