この傾向はニューヨーク都市圏に限ったものではなく、他の類似地域の多くでも住民が他州に移住している。ロサンゼルスやシカゴ、首都ワシントン、サンフランシスコ、コネティカット州のハートフォードやブリッジポート、ニューヘブンではいずれも、大規模な人口流出が起きているのだ。
人の流れのデータを記録している引っ越し業者ユナイテッド・バン・ラインズ(United Van Lines)によると、ニュージャージー、ニューヨーク、コネティカットの米北東部3州はいずれも、人口流出の速度が非常に高い州となっている。
こうしたデータは、現地に住む人であれば誰しも納得がいくことだ。生活費の高さやインフラの崩壊、高い税金が、住民にとって大きな問題となっている。ニューヨーク市の場合、住民が巨額の納税を強いられる一方で、学校や橋、トンネル、鉄道、空港、病院は崩壊している。
ニューヨークの道をただ歩くだけでも、街中が非常に混雑し汚いことが目に付く。また、治療を受けていない深刻な心身の病があることが明らかなホームレスの人々を目にしたり、そうした人々に話しかけられたりする確率も高い。
同市を運営する政治家らは、こうした人々を適切な施設で治療するのではなく路上で生活させる方が人道的だとでも感じている。また、犯罪率も上がっている。さらにそれに追い打ちをかけるのが、雪の降る寒い冬と、非常に蒸し暑い夏だ。
米人材紹介会社ロバート・ハーフのダレン・デファジオ副社長は、ニューヨーク都市圏のビジネス環境は全体的に強固であるものの、「企業は同地域を去り、会社や従業員にとってより魅力的な条件やインセンティブがある都市に移動している」と述べている。
政治家は、そのことを気にも留めていないようだ。ビル・デブラシオ市長は、市内が大規模な停電に見舞われていた最中、同市を離れて勝機のない大統領選の選挙運動に奔走していた。
ニューヨーク14区選出のアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員は、1万人以上の雇用を創出するはずだったアマゾン第2本社建設を阻止する運動を先導した。こうした反ビジネス感情はアマゾンのみならず、ニューヨーク市への進出を考えていたかもしれない企業も追い払ってしまっただろう。