12月2日にパリで2020年版が発表されるのに先駆けて、9月18日、2019年日本版の表彰式が、東京のフランス大使公邸で行われた。
この日ゲストシェフとして招かれていたのは、今年世界ナンバーワンの評価を受けたニューヨークのレストラン「ル ・ベルナルディン」のエリック・リパートだ。ミシュラン3ツ星の同店は1986年にオープン、魚料理が名物のレストランだ。
魚と日々向き合う魚料理のスペシャリストであるリパートは、近年の海洋の状況に強い危機感を抱いている。
産地に足を運んで、漁法まで確認
リパートは、カンヌに程近い南仏の地中海沿いの町、アンティーブで育った。祖父に連れられてよく近所の海に釣りに出かけたという。そこには「釣り糸に何かをつけて、それをたらせば、すぐに魚が釣れた」というほどに豊かな海が広がっていた。釣った魚はその日のうちに夕食のブイヤベースとなった。
しかし「最近は、地元の友人たちから、魚が全く釣れないと聞く。過剰な漁獲、温暖化、護岸工事などによる悪影響……。手を拱いていたら、20年後には何もなくなってしまうだろう」と、現在の海洋資源の状態にリパートは警鐘を鳴らす。
「だからこそ、店で使う魚の99%は天然のもの」なのだという。それは、「天然ものの味の良さ」だけでなく、「海洋汚染の原因にもなり、魚が十分に泳ぎ回るスペースもない」一部の養殖法への疑問、さらに「養殖があるから大丈夫と、人が海の環境に気を配らなくなることが危険だ」という考えからもきているという。
リパートが使う魚は、アメリカ海洋大気庁(NOHAA)がサステイナブルであると認めた魚のみ。NYからさほど遠くないメイン州やカナダなど、北アメリカの東海岸からの魚が80%、他は日本やヨーロッパからのものだ。しかし、輸入ものに関して言えば「空輸によるCO2排出量を考えると、自分たちがサステイナブルであるとは言えないけれど」と付け加える。
KAMPACHI Kampachi Sashimi; Crushed Niçoise Olives, “Greek Salad” 2017 by Daniel Krieger
それでも輸入ものを使うのは、例えばヒラマサは東海岸で獲れる量が少なく、ノルウェー産のもののほうが質は高いからだ。同じく、カンパチは、東海岸では獲れない種類の魚なので、テクスチャーが良い日本の神経〆のものを輸入している。最近、世界に広がりつつある神経〆の技法は、最近ではアメリカでもヒラメなどに使われているという。