現在50歳の女性起業家、ティファニー・マスターソンが2012年に創業した同社は、スキンケア分野で最も速いペースで拡大を遂げたブランドの1つだ。
マスターソンは同社が資生堂傘下になった後も、チーフクリエイティブオフィサーとして経営に関わっていく。12月に買収が完了した際に、彼女は約1億2000万ドルを得ることになる。
昨年、1億ドル近くの売上を計上したドランクエレファントは、2017年からサンフランシスコ本拠のプライベート・エクイティVMGの出資を受けていた。
市場規模5000億ドルの美容業界では近年、巨額の買収が相次いでいる。2016年には新興のコスメ企業「IT Cosmetics」が12億ドルでロレアルに買収された。近年はスキンケア分野への注目が高まっており、ユニリーバは今年6月、ラグジュアリー系スキンケア企業の「タチャ(Tatcha)」を5億ドルと伝えられる金額で買収した。
今回、ドランクエレファントに投じられた8億4500万ドルという金額は、スキンケアブランドの買収額としては史上最大規模といえる。マスターソンは、ヒューストン在住だった2012年に、4人の子供を育てながら同社を立ち上げた。
ブランドの設立当初からマスターソンがモットーとしたのは、彼女が「サスピシャス6」と呼ぶ、肌に悪影響をもたらす原料を含まないことだった。ドランクエレファントの製品は、アルコールやシリコーン、紫外線吸収剤、香料、染料、ラウリル硫酸ナトリウムを使用していない。
創業当初に、彼女は義理の弟から30万ドルの出資を受け、自身の弟からも資金を得て、事業を本格化させた。ドランクエレファントは現在、米国のコスメストア「セフォラ」で、売上トップのブランドの一角を占めている。
マスターソンは2017年のフォーブスの取材に「他のブランドのことは気にしない。セフォラに行くこともなくなった」と述べていた。
「トレンドは追わず、自分がやるべき仕事に専念する。コンシューマー・ファーストの姿勢でやっていく」と彼女は話した。