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2019.10.09

米製薬大手に8500億円の賠償命令、「男性の乳房が肥大化」で

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米フィラデルフィアの裁判所は10月8日、製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)に対し80億ドル(約8550億円)の損害賠償金を、同社の医薬品を使用した結果、乳房の肥大が起きたと訴えた男性に支払うよう求めた。

訴えを起こしたメリーランド州の男性は、2003年から2008年にかけて、J&Jの抗精神病薬「リスパダール」を使用した結果、乳房組織が肥大する女性化乳房化の症状を起こしたという。

リスパダールは、自閉症に由来する統合性失調症や双極性障害の治療に用いられる。男性は子供時代に自閉症に絡む睡眠障害と診断され、この薬品の処方を受けていたが、J&Jは薬品のリスクを知りつつも、その警告を怠ったと主張していた。

この裁判では2015年に、裁判所がJ&Jに68万ドルの支払いを求める判決を下していたが、これは懲罰的損害賠償を含まない金額だった。その後、上訴裁判所が下級審の判断を覆し、懲罰的損害賠償の支払いを求める道が開かれた。

J&Jのリスパダールについては、今回の男性以外にも複数の原告が、被害を申し立てている。J&Jの株価は時間外取引で1.75%の下落となった。

同社の広報担当は今回の賠償額が、あまりにも法外な額であり、評決は覆されると確信していると述べた。また、今回の評決は同社が提出した証拠が、認められなかった結果だと話した。

「今回の裁判所の命令は、患者の利益や安全を犠牲にして利益を追求する企業に、懲罰的損害賠償を科すものだ。ジョンソン・エンド・ジョンソンは子供たちを食い物にした」と男性側の弁護士は声明で述べた。

J&Jはこの件以外にも複数の訴訟を抱えている。同社は、ベビーパウダーに発がん性のあるアスベストが混入していたのを知りながら、それを隠蔽していた疑いが持たれている。また、J&Jが鎮痛剤の作用を誇大に宣伝した結果、オピオイド中毒のまん延を招いたとの訴えも起こされている。

編集=上田裕資

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