ビジネス

2019.10.11 18:00

企業のLGBT施策は当たり前の時代に。リクルートが示す「次のフェーズ」とは?


明文化すること、浸透させること

今回のリクルートの取り組みに協力したAllies Connect代表の東由紀さんに、取り組みの評価や、企業のLGBT施策の「次のフェーズ」についてお話を伺った。

「まず、リクルートとして会社のトップが“個の尊重”というメッセージを発し、企業風土としても浸透していることが施策を進める上で強い後押しになったのではないかと思います」

87にもわたる項目の精査に携わった東さんは、「まず『明文化』することが重要」と指摘する。

「LGBTの社員に対して個別に対応をしている企業は実際多く存在します。しかし、それは結局対応した社員の知識や感覚、また次の担当者によって変わってしまうことがあります。特にリクルートのような大きな会社では、どのグループ会社に入るかでも対応が変わってしまう可能性があるので、87項目を整理し、明文化することが重要でした」

制度に落とし込むかの検討だけでなく、オンラインのガイドブックにまとめ、全社員が閲覧できるようにしたことも評価ポイントだと話す。

「人事担当者の教訓として『仏つくって魂入れず』という言葉があります。制度をつくって終わりではなく、ちゃんと全社員に浸透させることが重要です。ひとりひとりの社員にとって『日々の仕事にどう影響するか』をわかりやすい形でガイドブックに落とし込んだことは良いポイントだと思います」

ALLYの行動変容の検証

今後の課題としては、「eラーニングを受けてALLYを表明した人の行動がどのように変容するかを検証する必要がある」と東さんは話す。

東さんの研究によると、LGBTに関する研修は、社員のLGBTについての「理解度」を高めるが、「行動」にまで大きな影響を与えるわけではないという。やはり行動を変えるためには「LGBTの当事者が身近にいる」という実感を持つことが重要だ。

「しかし、なかなか今の日本社会では、LGBTの当事者が特に職場でカミングアウトするのは難しい現状があります。研究でわかったことは、理解だけでなく行動に繋げるための要因は、『LGBTの当事者が身近にいる実感』に次いで『行動するALLYが身近にいる実感』でした。ここに『行動するALLY』、つまり『ALLYのロールモデル』を増やしていくことの意味があると考えています」


国や自治体レベル、使用者も労働者側からも、企業のLGBT施策の必要性が訴えられている
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文=松岡宗嗣

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