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「赤」を効果的に使った写真で拡散を狙う

文章で自由度の高い発信はできない。それなら、写真をうまく見せればいい。幸い、森美術館は国内でも先駆的に「写真撮影OK」を打ち出した美術館だった。

来場者にも、積極的に写真を撮ってもらって発信してもらえばいいのだ。

「そうはいっても作品は作家や所有者の意図もあるので、自由にトリミングをすることはできません。クレジットも必要で、ルールはたくさんあるのですが、その中でやれることをやろうと思いました」

「塩田千春展:魂がふるえる」を展示中の期間には、SNSに上げる写真は意図的に赤色を多く使ったという。

「来場者にアンケートをとると、赤だけでなく黒の作品なども人気があるのですが、SNSで拡散されるのは圧倒的に赤なんです。いわゆる“映え”でしょう。

フォロワーの方だけではなく、その友人、知人にも見てもらうことが大事なので、私はフォロワー数よりもエンゲージメントを重要視しています。『いいね!』やシェアしてもらうことですね。そのほうが純粋な口コミとして広がりますし、プロモーションくささがなくなりますから」


塩田千春 《不確かな旅》 2016/2019年 Courtesy: Blain|Southern, London/Berlin/New York 展示風景:「塩田千春展:魂がふるえる」森美術館(東京)2019年 撮影:田山達之 

洞田貫はSNS担当になってフォロワー数を大幅に伸ばした功労者であるわけだが、当の本人はフォロワー数にさほど頓着していない。

見た人にアクションを起こしてもらうことを重要視しているのだ。そして、一番起こしてもらいたいアクションはもちろん、「実際に森美術館へ来場してもらうこと」だ。

「日ごろ美術館に来ない人、そういう習慣のない人をいかに呼び込むかが肝なのですが、当館の展示は現代美術が中心。誰もが知る歴史上の名画などではないので、なかなかそのハードルは高いのです。

なので、まずその作家さんを知ってもらうことから始めるようにしています。例えば、今展示しているのは塩田千春さんの作品なのですが、GINZA SIXで先行して公開されていたので、その様子を先ず紹介をしました。

この人が次に森美術館に出展する人ですよと知ってもらうわけです。そこから、塩田さんの赤が印象的に使われている作品の写真なんかをどんどんアップして、拡散してもらう。もともとの知名度に関わらず、SNSを通してその作品がどんどん浸透していくんです」

洞田貫はSNSだけでなく、プロモーション全般も担当している。なので、作品そのものについてできる発信は限られていても、その他で工夫する余地がある。例えば、作品に絡めたコラボメニューなどだ。

「塩田千春展では『魂がふるえる』というテーマに合わせて、六本木ヒルズのラウンジで『ふるえるパフェ』を限定メニューとして展開しました。それもまたうまく赤っぽく作ってもらって、SNSに上げたくなるような見栄えにするんです。そしてまた拡散してもらう。現代美術のとっつきにくさは、SNSの力で克服できると思うんです」

文=衣谷康 写真提供=森美術館

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