ビジネス

2019.10.08

2週間で数万人が応募。南極科学者がエアビーと組んで実現したいこと

南極(エアビーアンドビー提供)

サバティカル休暇を使って、南極へ──耳を疑ってしまうような前代未聞のプロジェクトが先日、民泊仲介の大手エアビーアンドビー(以下、エアビー)から発表された。それが、海洋保護に取り組むNGOオーシャン・コンサーバンシーと共催する「南極研究の旅」だ。

エアビーは今年に入って、有給休暇を活用し、人々や社会に恩返しする活動に参加し、人生に変容をもたらす体験を促すことを目指すプログラム「サバティカル」を開始している。

第一弾のプロジェクトとしてすでに実施されたのが、イタリアのNGO「Wonder Grottole(ワンダー・グロットレ)」との地方再生プロジェクト「イタリア、サバティカル休暇の旅」だ。これは存亡の危機に瀕する南イタリアの歴史ある村、グロットレにボランティア5人が3か月間在住し、村の活性化を支援するというもの。今回発表された「南極研究の旅」はそれに続く第二弾のプロジェクトになる。

この旅の目的は、「世界で最も未解明な部分が多く、最も隔離された生態系に人類がもたらす影響への理解を深め、人々の意識を高めることにある」という。

プロジェクトのスタートは2019年12月の予定。現在、ボランティアを募集中(本日で終了)だが、エアビーの広報によれば、発表からわずか2週間で世界中から数万人の申し込みが来ているという。

今後、選考を通過した5人のボランティアは、南極科学者であるキースティー・ジョーンズ=ウィリアムズ氏とともに、チリで2週間のトレーニングを受け、南極に渡って10日間の調査研究を行う。南極での調査後は再びチリに戻り、南極での調査や学びを体系化する予定となっている。

前回のプロジェクトは「地方再生」が目的だったが、なぜ今回、南極の「環境保護」を目的としたプロジェクトが始まることになったのか。Forbes JAPAN編集部は南極科学者のキースティー・ジョーンズ=ウィリアムズ氏に話を聞いた。


南極科学者のキースティー・ジョーンズ=ウィリアムズ氏

「科学的なコミュニティに貢献する」

──どのような経緯で、このプロジェクトがスタートしたのでしょうか?

エアビーアンドビーは、「サバティカル」というプログラムを実施するにあたって、どんな目的、どんな意味がある旅行にするかを考えています。貴重な時間をとり、仕事を休んで行くわけですから、旅の目的や意味というのは非常に重要です。

また、彼らはさらに持続可能な旅行を考えており、「環境に貢献する」という思いを強く持っています。南極にとって環境問題は重要なトピックのひとつと考えたようで、今回私たちに声がかかりました。

最初に話を聞いたときは、なぜエアビーのような会社が南極、ひいては科学的なコミュニティに貢献するのか、あまりピンと来ていませんでした。ただ、自分自身で「サバティカル」というプログラムについて調べていくと、彼らが私たちに話を持ち込んできた理由がとても理解できました。

とても強い思いで科学的なコミュニティに貢献しようとしている。私はこのプロジェクトは素晴らしいものだと思いますし、今回一緒にプログラムを実現できて、非常に嬉しいです。
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文=新國翔大 写真=エアビーアンドビー提供

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