その開発に約2年間力を注いできた彼が、嬉しそうにこう話してくれた。
「僕は新卒から開発部門でプロジェクトマネージャーや製品開発を担当させてもらっている。他社からも複数内定は貰っていたけど、Ankerに入社して本当に良かった。自由な雰囲気の中で、自ら手を上げれば新卒でもチャンスが廻ってくる、これからも世界市場に認知されるインパクトのある製品開発をしていきたい」
一見真似しやすい製品だからこそ、あくなき技術革新が不可欠であり、またいちばん真似が難しいと言えるユニークな企業文化があるからこそ、人才を活かしきり、グローバルで製品価値と企業価値を高めていくことができているのだ。
違いを最強の強みにする
私は今までグローバルカンパニーと呼ばれる企業と多数関わってきたが、欧米系でも中華系でも日系でもない、これほどまでに多様性豊かな企業は非常に珍しい。
大手企業のみならずスタートアップでもそうだ。技術力や個々の能力は素晴らしい成長企業は増えたが、バックグランドの違う仲間を活かす企業文化はなかなか築けないという新たな課題を、昨今感じるようになっていた。Ankerはその課題をクリアしている。
では、創業者がスティーブンのような経験をしていなければ、このような企業文化を築くことは不可能なのかというと、3拠点の取材を終えた今、私はそうは思わない。確かに創業者のハイブリッドなDNAの影響力は大きいが、もし彼が同胞だけを集めたい経営者であれば、Ankerは決していまの状態にないだろう。
「自由な風土は大切だ、ただしそれだけでは成り立たない。皆の情熱のベクトルを合わせること、単純にそれが僕の役割だと思う」。スティーブンのそのシンプルな言葉が深く心に響いた。
国籍や出身地が同じであっても、人はそれぞれ違いがある。その違いを認め、尊重し合い、ビジョンとゴールを明確に共有し、ローカルと個人を信じて任せていく。その先にこそ、多様性を最強の強みにしてイノベーションを起こす、そんな企業文化を仲間と共に築いていけるのではないだろうか。
連載:深センのリアルなキャリア事情
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