シリコンバレーで構想、深センで起業 Ankerの「企業文化」という強み

Anker Global Meeting


その原動力は何だったのか。「最初の動機は、それまで勤めていた会社から独立することでした」と井戸は言う。複数の海外ブランドを日本市場に持ってくることを考えていて、Ankerもそのうちの1ブランドとして考えていた。

「スティーブンとプレジデントのドンピン・ジャオと出会い、『市場と向き合うメーカーになる、ビジネスモデルのイノベーションを起こす』という彼らのビジョンに共感し、これだと確信したのです。当時の製品から既にその意思の高さを感じていましたから。それでこの製品に全力を賭ける決意をし、ゼロから日本法人を設立し、日本市場を開拓する挑戦を始めました」

そして、設立初年度で売上10億円をあげ、目標であったアマゾンでのシェア1位の座に上り詰めた。



井戸が率いる日本法人の成功の秘訣は何なのか? それはAnkerの企業文化である、徹底したローカライズ、フラットな組織、透明性、そしてグローバルで最速スピードを実現している点であろう。

とくに徹底したローカライズには驚く。製品の価格設定、ブランディング、販売戦略、採用戦略、すべて日本のチームが主導で進めている。個人的に多数の外資企業との仕事をしてきたが、価格設定からローカルに一任している企業は、私の知る限り他に聞いたことがない。

「その裁量権を最大限活用しながら、本社からのサポートも最大限に引き出す、その建設的な信頼のループを廻し続けていくことが重要だ」と井戸代表は話す。

また、カスタマーサポートチームを自社内に設けている点も成功のカギといえる。市場と向き合うメーカーとして進化していくということは、ユーザーの声をリアルタイムに受け止め、改善改良を日々追求するということ。そして「製品プラスαの付加価値も提供する」ということだという。

そのためにAnkerでは、顧客の目であり耳であるカスタマーサポートチームを拠点毎に社内に設け、全商品18カ月保証とともに、きめ細やかなサポートを追求している。

企業文化をグローバルで共有

なかなか真似のできない企業文化だが、その文化がグローバル全体でもブレずに共有されていることが、とくに素晴らしい。そう実感したのが、シアトルのオフィスでコミュニケーションのグローバルヘッドである米国人のエリック(Eric Villines)を取材した時だった。

エリックはテクノロジーとマーケティングの両方を専攻後、サンフランシスコやシアトルを中心にライター、メディア媒体、PRエージェンシー等を経験してきたコミュニケーションのエキスパートだ。

彼がAnkerと出会ったのは2017年。スティーブンとの初のテレビ面談で4時間も話し込み、そのクリアなビジョンやミッションに共感し、アジア発Ankerを「グローバルブランド」としてさらに進化させるために仲間入りした。
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文=藤井 薫

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