テクノロジー

2019.10.28 07:00

シリコンバレーで構想、深センで起業 Ankerの「企業文化」という強み

Anker Global Meeting

Anker Global Meeting

「ここまで国籍を感じさせない、多様性豊かな企業があったのか?」

それがAnkerに出会った時の第一印象だった。そして今回、中国の深セン本社、米国のシアトルオフィス、東京にある日本法人の3拠点を取材して、彼らの「企業文化のイノベーション」を実感することができた。

アマゾンをはじめとしたEC市場のモバイルチャージー関連部門で圧倒的なシェアを誇るAnkerは、愛用者も多いのではないだろうか。同社は2011年、中国で創業された。

現在、深センと長沙を本社とし、米国、日本、ドバイなどに7拠点を持ち、全社員数1500名以上で世界展開をしている。創業当時からの売上比率1位は米国、2位が日本、そして3位が欧州であり、2018年度の総売上は約8億ドル(約860億円)を突破している。

シリコンバレーで構想を練った

深センの本社で会った創業者/CEOのスティーブン・ヤンは、「なんて穏やかな人なのだろう」というのが第一印象だった。



そんな彼が30代半ばにして、真のグローバル企業を率いている。いや、率いているというよりも、彼の周りに自然と多様性豊かな仲間が集まり、その輪が世界に広がり、そしてメンバーが自らイノベーションを起こすという企業文化が築かれている。

その企業文化の基盤となっていると言えるのが、スティーブン自らが中国にバックグランドを持ちつつ、グーグルの検索エンジンのトップエンジニアとしてシリコンバレー本社の勤務経験があることだ。

ソフトウェア企業出身者による、ハードウェア市場における隙間の発見。それは、信頼出来る品質のモバイルバッテリーをリーズナブルな価格でエンドユーザーに直接提供し、サポートを充実させるというビジネスモデルであり、今となってはシンプルなこのループだが、当時は存在していなかった。

自らのビジネスモデルを実現しようと、シリコンバレーで働きながら構想を練り、夜な夜な中国とのやり取りを開始する。優れた製品が必要なため、その開発と製造に適した深センを本拠地に選んだ。

ゼロから売り込んだ日本人

そんなカラフルな環境に、ごく初期に、外国人として飛び込んでいった日本人がいた。現在の日本法人代表の井戸義経だ。

井戸は東京大学卒業後、米国系金融機関勤務を経て、2012年にAnkerと出会った。そして、何のゆかりもなかったが、「この製品は日本でもヒットする、日本でのビジネスを僕に任せてほしい」と自らコンタクトをとり、ビジネスプランを売り込んだ。
次ページ > 日本法人の成功の秘訣は

文=藤井 薫

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事