新たな観光資源の開発には、「総理大臣博物館」の建設を

ビル・クリントン大統領センター(Getty Images)

仕事柄、全米の各都市を歩くが、そこで、時間があれば必ず立ち寄るのが大統領博物館だ。現存する大統領博物館はすべて訪れたが、それぞれに独自性があって興味深い。

将軍でもあったアイゼンハワーの博物館は軍事関連の展示が満載だし、牧場と乗馬を愛したレーガンの博物館は高台からの眺めが素晴らしい。遺言として入場料をとるなと指示したジョンソンの博物館は本当に無料だったし、ブッシュ(父)博物館は大統領専用機の中身も披露していて面白い。


ジョージ・W・ブッシュ大統領の博物館

ブッシュ(子)博物館では執務室のレプリカに、カメラマンが待ち構えていて、大きな執務机に座った来館者の写真を撮って、販売している。貧乏青年が身分違いな女性に恋をして求婚したとは、トルーマン博物館で知ったことであり、フォード博物館では昭和天皇の親書の実物を見ることができる。

大統領博物館は時代を切り取る

アメリカの大統領博物館は、任期中の行政文書を格納する政府図書館と機能をともにしているから資料性が高い。ところが、大統領自身のスキャンダルについての展示になると、とたんに自由の国アメリカらしくなくなる。

クリントン博物館は比較的新しいので、展示の洗練さや視覚効果の素晴らしさは群を抜いているのだが、モニカ・ルインスキーとの不倫スキャンダルに対する事物はほとんどない。弾劾裁判にさえなったというのにである。

また、ウォーターゲート事件で失脚したニクソンでも、事件の背景や辞任に追い込まれた最後の半年間のドタバタの説明もゼロに近い。博物館の中立性、あるいは政治色の排除ということがよく言われるが、その意味ではアメリカの大統領博物館は(ニクソン恩赦について両論を併記したフォード博物館以外)全部失格である。

とはいえ、そういう問題はあっても、大統領博物館はその時代を見事に切り取っていて、面白さは圧巻である。たとえ中立性を損なっていても、等しく愛国心をもって時のリーダーを懐かしむ眼差しがあふれている。

考えてみれば、国のリーダーの政策やキャラクターをもって学ぶ歴史は、その背景にある史実へのさらなる興味をアップし、国民と過去を確実につないでいる。若者たちはジョンソンへの興味から公民権運動を知り、レーガンへの思慕から冷戦の崩壊を学ぶ。
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文=長野慶太

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