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岡野栄之教授(後列右から3人目)、山中伸弥教授(後列左から3人目)ら再生医療の研究者と、脊髄損傷患者が一堂に集って(提供:岡野栄之氏)

毛髪の再生、人工血液から、「一度傷ついたら二度と元には戻らない」とかつては言われてきた中枢神経系の機能回復まで、急速に発展が進む再生医療。

経済産業省の研究会で2013年に出された世界の将来市場規模予測によると、周辺産業まで含めると2020年2兆円、2030年17兆円、2050年53兆円とされており、来年以降爆発的な成長が期待されている分野だ。

(提供:岡野栄之氏)

iPS細胞開発者の山中伸弥氏と連携して脊髄損傷の機能回復などを研究してきた再生医療の第一人者、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授がこのほど報道機関向けセミナーで講演し(主催:サンバイオ)、研究段階から臨床での治療へと進む再生医療について語った。

脊髄を怪我して麻痺になる人は毎年5000人以上

岡野教授の研究の原点は、脳研究の、ある「教義」に対する挑戦だった。

1906年にノーベル生理学・医学賞を受けた神経生物学者サンティアゴ・ラモン・イ・カハールは、「いったん発育期が終わると、神経系の細胞の成長や再生の源泉は、不可逆的に枯渇してしまう」という言葉を残した。以後、「成長期を過ぎた中枢神経系は傷ついたら元に戻らない」という考えが常識として受け入れられてきた。岡野教授らはこの教義を打ち破るべく研究を続けている。

交通事故やスポーツでの怪我で脊髄が傷つくと、その部分より下で麻痺が起こり、車椅子での生活を余儀なくされるようになるなど、生活の質に大きな影響を与える場合がある。脊髄の怪我による麻痺に苦しむ人は日本で毎年5000人以上出ており、岡野教授は脊髄損傷の治療法確立に向け、マウスやサルでの実験などからこの分野への知見を深めた。

1998年に岡野教授らは、成人の脳にも、新しく神経細胞(ニューロン)を作り続けうる「神経幹細胞」とみられる細胞があるのを見つけた。さらに2006年には脳梗塞で傷ついた脳でも実は神経幹細胞から新しいニューロンが生まれており、傷に向かって移動して育っていくことがわかったが、それらの9割以上がすぐに死滅していた。

研究が進むうちにわかってきたのは、中枢神経系が傷ついたのち、再生する神経幹細胞の量がそのままでは機能回復のためには足りないことと、傷の周辺に再生を邪魔する要素ができること。これらの理由で、神経幹細胞があったとしても結果的にカハールの考え通りになっていた。

中枢神経系の傷ついた部分に新たな神経幹細胞を移植することで、機能を回復させる。それが岡野教授の目標となった。

文=縄田陽介

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