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しかし今回、アンドリーセンは本誌に「新たな一手」を語った。彼らはアンドリーセン・ホロウィッツの150名の従業員全員をファイナンシャル・アドバイザーとして登録し、VCとしての立場を完全に捨てるという。

なぜか? VCは長らくウォール街式の厳しい監視を受ける代わりに未上場の新株投資を行ってきた。そうしたトレードオフの関係を、各社は進んで受け入れてきたのだ。しかし暗号通貨の時代になって事情が変わった。このハイリスクの投資に関して、米証券取引委員会(SEC)は監視の強化が求められると述べている。

そういうことなら、とアンドリーセン・ホロウィッツは考えた。VCという立場を捨てれば、よりリスクの高い案件に深く関わることができる。

バットマンみたいな助っ人が来てくれる

09年にVCを立ち上げるにあたり、アンドリーセンとホロウィッツがブランド戦略のモデルとしたのは、同業のエリートたちではなく、オラクルだった。いまの、ではない。「企業向けソフト戦争」時代に、ラリー・エリソンが見せた超攻撃的なそれだ。ふたりはメディアと手を結び、スターがひしめくイベントを主催し、集う人すべてに伝統的なVCの悪口を吹き込んだ。

初めはシード投資を行っていた。だがやがてコンビは常識に背を向け、すでに企業価値が数十億ドルに達したツイッターやフェイスブックなどの株式も旺盛に呑み込んでいく。早期のエグジットと倹約で手にした金を彼らは再投資し続けた。

この会社の構造は、伝統的なVCよりもむしろ、ハリウッドのタレント・エージェンシーに近かった。新たに迎えたゼネラルパートナーの給与も相場より低かった。ファンドの運用額の2%に当たる手数料の多くは、サービスチーム(マーケティングやビジネス開発、財務、人材採用などの専門家を含む)を急拡大させることに回した。

これが何を意味するか? 投資先スタートアップへの、超強力な支援体制の構築だ。

スタートアップに新たな資金調達が必要になったら──アンドリーセン・ホロウィッツの専門家チームがプレゼン資料を書くのを手伝い、本番前に何十回も予行演習をさせて指導する。工学のわかるVPが必要になったら──最良のヘッドハント会社を選び、最適な候補者の選定に力を貸す。人事でも会計でも同じことだ。

「何かが軌道を外れかけても、電話をすればバットマンみたいな人たちが助けに来てくれるんです」と、非営利組織や選挙事務所向けソフトウェアの制作会社、ネーションビルダーのレア・エンドレスCEOは言う。

さらにアンドリーセン・ホロウィッツの本社やニューヨークのサテライト・オフィスにある「エグゼクティブ・ブリーフィング・センター」では、スタッフが“縁結び”に奔走した。最先端のテクノロジーを見せると言って大企業や政府機関を招き入れては、出資先のスタートアップに次々とプレゼンをさせたのだ。

文=アレックス・コンラッド 翻訳=町田敦夫 編集=杉岡 藍

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