「Forbes JAPAN」が8月で5周年を迎えたそうで、感慨深い。私は創刊号から書いているので、本連載が始まってから5年経ったことになる。その事実にも驚いている。よくこんな駄文を載せていただけているものだ。編集部の懐の深さと、それにも増して読者諸賢に感謝したい。また前職の先輩であり、投資家・起業家・ジャーナリストである本誌の高野真氏(現Forbes JAPAN発行人)には称賛の気持ちでいっぱいである。
継続は力なりというが、それは本当だ。
実際にベンチャー企業においては、起業した会社の7割が3年以内に倒産、もしくは廃業に追い込まれている。起業で一発当てて上場、と考えている人もいるだろう。事実、「Forbes JAPAN」には何人もそのようなヒーローが登場しているので、「がんばれば、なんとかなる」と思いがちだ。
ところがそうは問屋が卸さない。現実的には、上場はおろか生存することすら難しいのである。
起業というのは、そもそも無理を通そうということだ。ベンチャー企業にはだいたい見事なまでに何もない。実績も、信用も、金も、人材も、そしてネットワークも、絶望的なほどに何もないのである。理性的に考えれば、勝てる要素が一つもない。無理が通れば道理が引っ込む、ならぬ、“無理を通せば道理が引っ込む”のだ。
学生からそのまま起業する人もいるが、多くは勤め人、すなわち“サラリーマン”を経て起業することが多い。たまに、「人に頭を下げたくない」とか「サラリーマンに向いていない」ので、起業でもするかと言って起業する人がいる。そして本当にごく稀に、それで成功してしまう。
しかし、現実的に多くの起業家をみていると、サラリーマンとしても抜群の成果を出した人が起業に成功しているし、少なくともIPO(新規株式公開)まで辿りついた起業家のほぼ大半は、サラリーマン時代に顕著な成果を上げた人だ。
カリスマセールスマンだったり、天才エンジニアやカリスマコンサルタントだったりサラリーマン時代に顕著な成果を上げた人が多い。それはそうだ。サラリーマンの方が成果を上げやすいのである。
ブランドと資金があり、多くの先輩・後輩のサポートも得られる。人事部や経理・マーケティング部のような後方支援がしっかりしている。そのような状況で成果を出せない人は、起業しても難しい。
なぜなら、起業すればそのようなインフラの構築もやらなければいけないからだ。なので、サラリーマンとしても成果が出せない人が起業することはオススメしない。転職するか、今いるところで工夫したほうが未来への活路は開けるし、起業だけが成功への最短距離とはいえない。
「Forbes JAPAN」の高野氏もサラリーマンとして顕著な成果を上げてきたし、おそらく日本人のサラリーマンとしては最も成功した人の1人かもしれない。その点では、本誌が5年生き残って黒字化も果たし、その利益を積み増しているのは決してマグレではないのだろう。
私はレオス・キャピタルワークスの創業者であるが、やはり起業してから現在までは苦難の連続で、言葉にできない苦労を重ねてきた。苦労をしたからといって、必ずしもうまくいくとは限らないこともよくわかっている。無能ならば絶対に失敗するが、有能であっても成功するとは限らない。そこには相当、運の要素も存在する。