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川村雄介の飛耳長目


次の論点は、会社は、社員らの行動にどこまで責任を持たなければならないか、である。プライベート時間に、しかも職務とまったく無関係に引き起こされた会社関係者の不祥事について、なぜ会社が社会的に非難されるのだろうか。

バイト先などで凶悪事件を犯した学生の行状に謝罪するのは親ではなくて大学だし、社員の社外での不行跡をお詫びするのは会社である。吉本興業は、同社の請負業者(芸人は、吉本と雇用関係にはなく請負契約の関係)が、吉本に無届けで行った不適切業務について糾弾されてしまった。

どうもおかしい。日本人の民度と社会の成熟に期待するしかないのだろうか。しかし、当面、この国では、人はいつでも深い溝を作ってしまう、という人材リスクは残り続ける。

そして最も頭の痛い問題が、反社会的勢力の排除である。

まずは、排除のための予防行動だ。大企業の標準的な方法は、取引候補先を犯罪履歴データベースにアクセスしたうえ、警察OBなどによる経験知でダブルチェックするものだ。慎重を期す場合にはこれらに加えて民間の調査会社に依頼することもある。コストも馬鹿にならない。

だが、この方法では、二次取引先までは範囲に入らない。先の先、まではチェックできないのだ。また、そもそも当事者が会社を通さなければ、反社防止システム自体が作動せず無力になる。ここでも、人を信用できないのである。

もうひとつは、最近増殖しているといわれる「半グレ」という人たちへの対応である。彼らによる犯罪や反社会的行為が、市民たちの脅威になっている昨今でもある。半グレは狭義の反社に入らないこともあって、警察ですら把握し切れていないそうである。これを民間企業がどうやって排除できるのか。

吉本劇場は、企業のリスク管理者にとって、多くのヒントを与えている。リスク管理の要諦は、悲観的に準備して楽観的に対応すること、だそうだ。だが、人を信頼する限り、楽観的に準備して悲観的に対応すること、になりがちである。

人が人を信用してはいけない、とは真夏の夜の悪夢というべきか。そもそも、人間の生業そのものが悪夢なのだろうか。


川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、2000年に長崎大学経済学部教授に。現在は大和総研特別理事、日本証券業協会特別顧問。また、南開大学客員教授、嵯峨美術大学客員教授、海外需要開拓支援機構の社外取締役などを兼務。

文=川村雄介

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