フェイスブックの「メッセージ暗号化」が問題視される理由

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暗号化で「コンテンツ管理」義務から逃れられる

一方で、各国政府が、暗号化以上にフェイスブックに圧力をかけていることがある。それは、ユーザーコンテンツの管理だ。オーストラリアやニュージーランド、EU、イギリスはコンテンツ管理を法制化し、違反した企業には制裁を科すと脅している。

しかし、暗号化が実行されるとコンテンツの管理は物理的に不可能になる。

政府によるバックドア設置は、特定の個人を対象とした傍受やコンテンツへのアクセスが主な目的だ。しかし、より大きな問題となっているのが、全てのメッセージを対象としたモニタリングと違反コンテンツの削除だ。

各国によるフェイスブックへの公開書簡には、次のように記されている。「児童の性的搾取や虐待、テロリズムなど、違法なコンテンツや活動を検知して犯罪者を訴追し、市民の安全を守る行為をフェイスブックは阻害すべきではない」

一方で、公開書簡はフェイスブックが「2017年10月から2019年3月の間で2600万件のテロリストによる投稿を検知した」と述べ、フェイスブックのコンテンツ監視活動を称賛している。

各国政府は、フェイスブックが暗号化を実行すれば、こうした違反コンテンツの検出は不可能になり、児童の性的搾取や他の重大な犯罪が起こるリスクが飛躍的に高まると警鐘を鳴らしている。

違法コンテンツの監視や投稿者への措置は決して生易しい仕事ではない。今後はAIのさらなる活用も予想される。フェイスブックが暗号化を推進する目的は、ユーザーのプライバシー保護だけではなく、コンテンツ監視への対抗策とも言える。

また、テクノロジー業界はフェイスブックの暗号化を擁護しているが、その真意はフェイスブックがユーザーデータを利用して、莫大な収益を上げることを阻止することにあるようにも見える。

編集=上田裕資

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