フェイスブックの「メッセージ暗号化」が問題視される理由

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フェイスブックは、利用者のデータを乱用したことで世界中から非難を浴びているが、そのフェイスブックが、政府による個人データへのアクセスを防ぐ最後の砦になっていることは皮肉としか言いようがない。米英などの政府は、当局がコンテンツにアクセスするためのバックドアを設けるよう、同社に圧力をかけている。

フェイスブック自身も、暗号化に対してジレンマを抱えている。同社は、暗号化を推進すれば従来のようにユーザーデータから莫大な収益を上げることができなくなるからだ。それでもフェイスブックが暗号化を推進する理由は何だろうか?

フェイスブックは、16億人の月間ユーザー数を誇る世界最大級のメッセージアプリ「ワッツアップ」を傘下に持つ。ワッツアップは2016年以来、エンドツーエンドの暗号化を実装しており、メッセージを発信したユーザーと受信者しかコンテンツを閲覧できない。

ワッツアップは暗号化キーをユーザーが保有するため、運営元が暗号を解除してコンテンツにアクセスすることはできない。仮に、警察や政府機関が捜査目的でワッツアップのコンテンツにアクセスしようとしても不可能だ。政府関係者はこの事態に懸念を高めている。

フェイスブックが暗号化を導入すれば、懸念はさらに強まることになる。フェイスブックは、信用を回復するため、プライバシー保護を最優先に掲げ、フェイスブックメッセンジャーをはじめ、他のサービスにもワッツアップと同じ暗号化を適用すると発表した。

これに対し、アメリカ政府はメッセージングプラットフォームに対するバックドアの義務付けを検討している。アメリカ、イギリス、オーストラリアの政府当局者は公開書簡を発表し、市民を守るため、合法的にコンテンツへアクセスする手段を含めるまで暗号化を延期するようフェイスブックに要請した。

各国政府は「企業は、重大な犯罪に対する捜査を妨げないよう、コンテンツへのアクセスを排除するようなシステム設計を意図的に行うべきではない」と述べた。政府見解には一理ある。警察が犯罪者やテロリストのメッセージをはじめ、児童愛者と被害者との間のやり取りなどを傍受できなくなるのは不安だ。

しかし、フェイスブックや他のテクノロジー企業は、「バックドアを設ければシステムの脆弱性が高まり、リスクが高まる」と主張している。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグは3月に次のように述べていた。「これからのコミュニケーションは、プライベートで暗号化されたものになり、ユーザー同士の会話が他人に漏れることはなくなる。また、メッセージやコンテンツは未来永劫保存されなくなる」
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編集=上田裕資

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