服装も郷に入りては郷に従え。相手の心をつかむTPOのコツ

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人前で話すときの服装は、話の内容と同じぐらいに重要だ。話が伝わりやすくするためには、聴く人が、まずは話の内容以外のことに注意が向かないようにしたい。話しているときの印象が良い人は、服装に関して、聴き手にはわからないような細かい工夫をしているものだ。

たとえば、オフィスを離れて、顧客のところに会いにいく場合だが、その際は、相手先の場所に自分の雰囲気を合わせることが大切だ。とくに地方で地域色が強い場所なら、それなりの配慮も必要だ。その地域に住む人の気質は、風土や気候や歴史にも深く関係している。

ビジネスシーンにはフィットしていた黒やグレーといった無彩色の服は、自然の豊かな土地には馴染まない。かなり冷たい印象になる。また、伝統や歴史を重んじている土地に、派手で新しいデザインの服を着ていくのも、印象を悪くする。どこか落ち着きを感じさせないからだ。

初めて行く場所では、服装がミスマッチになることはよくある。しかし、何度も訪れているのにずっと違和感を感じさせては、いつまでたっても「お客さん」として見られてしまう。聴く側も、そんな馴染まない人の話を聞きたいとは思わないだろう。服装も「郷に入りては郷に従え」である。

普段から着慣れているものを選ぶ

多くの聴衆の前でスピーチするときに着る服はどのようにしたらよいか。第一に考えたいのは、自分を緊張させないような服装にすることだ。その日のために新たに用意した服より、普段から着慣れているもののほうがよい。

次に注意したいのは、細かい色柄の服は、遠目に見たときには、その色合いは伝わらないものと考えておこう。生地にほんのり光沢があるものは、ライティングに映えて、話す人間に活気を与えてくれるのでお勧めだ。

これは当然のことだが、ステージに登壇する前は、身だしなみにも注意したい。ステージ脇の袖は暗かったりするので、服についていた糸くずや埃りなどを見落とすことがある。細かいようだが、いったんステージに上がったら誰も直しにきてはくれない。

また、登壇前まで、上着を着たまま、長時間、椅子に寄りかかって座っているのはNGだ。聴衆に向かって出てきたときはよいが、シワだらけの背中を見せて降壇することになる。ジャケットなどは直前までハンガーなどに吊るしておいて、背中にシワや汚れがないかをチェックしてから着るようにしよう。

また、あまりケースとしては多くないかもしれないが、自分が取材されて話すときの服装についてだ。2つの考え方がある。1つは、インタビュアーとのコミュニケーションを円滑にするために、ちょっとした話題づくりになるような着こなしを心がけること。

もう1つは、取材されたものが記事になったりする際の注意だ。取材から記事になるまでかなりの時間差があるなら、公開時に服装を合わせて選びたい。その服装がワンシーズンずれていたら、記事の鮮度も落ちてしまう。念のため、事前に撮影などがあるのか確認しておき、状況に応じた配慮が必要だ。また、その際、もし写真がモノクロになるのなら、服装の色はコントラストが強いほうがよいだろう。

さらに撮影時の注意を補足をすると、ジャケットなどを着ているときは、前ボタンは外しておいたほうが生地が体にフィットする。ボタンを閉めたまま、テーブルの上に腕を出していると、ジャケットの肩や襟が体から浮いて、サイズが合っていないように見えるので注意したい。

連載:表現力をよくするレシピ
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文=中井信之

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