ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

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アメリカの運転免許証には、名前や生年月日の他に、身長や体重を記載する欄がある。しかし、ほとんどの場合、独身女性なら体重を軽めにしているし、独身男性なら身長を高くサバを読んでいる。嘘だと思うなら、知り合いのアメリカ人の運転免許証を見せてもらうといい。9割がた身長や体重はフェイクだ。

住民票や戸籍謄本のないアメリカでは、自宅を引っ越す時、基本的に運転免許証の書き換えをもって住所変更となる。そして、新しい住所を陸運局に届けると同時に、各種の膨大なダイレクトメールを受けることになる。

ということは、合法的なやり方で、陸運局は個人情報を一定の事業者に流していることを意味し、自分の身長や体重の情報が簡単に漏れてしまうのなら、それはデジタル時代、正直に記入しておくのは不利だという考えにはなる。

コモンセンス・アプローチという考え方

とはいえ、アメリカでは、日本人が想像する以上に、嘘は罪だと位置づけられている。もちろん、日本でだって嘘はいけないことなのだが、嘘 (lie) という語感が持つ刺激性は、日本でのそれよりはるかに強い。

ラジオ牧師の山下正雄氏(日本キリスト改革派教会のラジオ番組「あさのことば」担当)によれば、聖書では、嘘をつくことを厳しく戒めており、キリスト教の伝統に影響されてきた国々の倫理では、嘘は絶対に許されないものであるという考えが根強くあるとし、「嘘も方便」という格言を持つ日本人の考え方とは対照的だ、と指摘している。

もちろん日本人とて、「嘘も方便」だとは誰も思っていないが、ここまでアメリカ人が嘘を戒め、忌み嫌いながら、一方ではこの運転免許証の身長と体重の記載のように、日常的に使われている嘘を目撃し、そのダブルスタンダードに途惑う日本人の駐在員はとても多い。

嘘をつくことに対して、理解を求められても、アメリカ人とて答えられないが、こんな時によく聞くのが、「コモンセンス・アプローチ」という考え方だ。

文字通り常識的なアプローチということで、例えば、運転免許証の虚偽記載はネバダ州では軽犯罪を超える罪なのだが、今回、筆者も運転免許証の書き換えがあったので陸運局の職員に直接聞いてみると、身長や体重の虚偽記載で逮捕や告発をされることはほとんど考えられないと言っていた。

つまり、嘘はいけないが、社会にどれだけ実損を与えるかによって、制裁や罰則は決まってくるという考え方だ。このへんは日本の企業文化とも類似している。

文=長野慶太

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