米国で「景気後退」の懸念鮮明、超富裕層らも準備を開始

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ここ最近の経済指標の悪化や中国との貿易摩擦の高まりが、市場に暗い影を漂わせ、アナリストやエコノミストの多くが、今後2年以内の景気後退入りを予測し始めている。

全米企業エコノミスト協会(NABE)は10月7日の最新レポートで、エコノミストの80%が今後の景気減速を予想したと発表した。この数値は今年6月の60%から悪化している。

専門家の過半数が今後の最大リスク要因に貿易政策をあげており、回答者の24%が2020年中盤のリセッション(景気後退)入りを予測。69%が2021年中盤の景気後退を予測した。

ヘッジファンドマネージャーの間でも、景気後退への懸念が過去10年で最大レベルに達している。先月、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが実施した調査では、38%の投資家が来年のリセッション入りを予測し、2009年8月以降の最高値となった。

デューク大学の「CFO・グローバル・ビジネス・アウトルック」が先日、実施した調査によると、景気の楽観見通しは過去3年で最低水準となった。米国のCFOの53%が2020年の米大統領選の時期に、リセッションが始まると予測した。さらに、3分の2が2020年末までに景気後退入りするとの見通しを示した。

直近のUBSの調査では、超富裕層たちも2020年のリセッション入りへの準備を進めているとされた。富裕層向けのファミリーオフィスの半数以上が、来年の景気後退を予想し、45%がポートフォリオを債券や不動産に移している。また、42%が現金準備高を増やしている。

一方で、ブルームバーグの9月のエコノミスト調査結果は、わずかに前向きな指標となり、来年のリセッション入りを予測するエコノミストは35%だった。しかし、この数値も昨年末から20%の上昇となった。

9月の米製造業景況感指数は10年ぶりの低水準で、多くのアナリストが景気の先行きに懸念を示している。ここに中国との貿易摩擦が加わり、景気後退への懸念は一層強まっている。株式市場でも第4四半期の始まりが波乱含みの展開となり、悲観的見通しが広がった。

来週には決算発表シーズンが始まるが、一部の企業が既に見通しを引き下げる中で、投資家は不安を募らせている。アナリストらはS&P 500企業の第3四半期の売上が、前年比4%近い下落になると予想している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、これは2016年以来で最大の落ち込みだという。

編集=上田裕資

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