ビジネス

2019.10.09 06:30

コスメブランドが狙う潜在顧客 ターゲットは「若き女性ゲーマー」

ユナイテッド・タレント・エージェンシー代理人のハナ・ジア

今や、ゲームの広告に費やされる広告費は33億ドル(約3500億円)に上ると言われる。ゲーマー全体の約46%を占めるのに見過ごされがちなのが、女性ゲーマーたちの存在だ。


ビデオゲームの巨大スクリーンが乱立する、ロサンゼルスコンベンションセンターのE3のイベント会場。ガラス張りのブースの中で2人の女性ゲーマーがシューティングゲームの「ボーダーランズ3」を試演しているのを約4000人のファンが見守っている。バルキラエ(Valkyrae)27歳とアレクシア・レイエ(Alexia Raye)23歳のTwitchのフォロワーは、2人合わせると約110万人に達する。そのイベント会場のほど近く、ユナイテッド・タレント・エージェンシーで代理人を務めるハナ・ジアは猛烈なスピードでスマホに文字を打ち込んでいた。

この巨大ゲーム見本市の会場で、冒頭の2人と高級コスメブランドMAC Cosmeticsとの非公式な面談をセッティングしようとしていた。彼女らのファンの多くは女性であり、コスメブランドにとっては新しいマーケットの可能性が広がっている。会場を訪れたMAC幹部によると、モバイルゲーム「オナー・オブ・キングス」と提携した同社のリップスティックは「大成功」を収めたという。 たいていの広告主は「喜んでこの手の非公式な面談に応じてくれます」とジアは言う。「彼らは『ゲーマーといえばこう』という固定観念をもっているのだと思います。そんな彼らが私の契約ゲーマーのリストを見れば、“とてもユニークですね。もっと詳しく知りたい”となるんです」。ジアの明確な訴求ポイントは契約者のほとんどが女性である点だ。

「メークアップからゲーマーを連想する人はいないでしょう」とMACの広報責任者ケイリー・ニールは言う。「私たちにとっても未知の世界への挑戦なのです」。

ニールセンの調べによると、今の20〜30代は4年前と比較して一週間のテレビ視聴時間が8時間減っているという。この状況を受け、広告主らはテレビ以外の媒体に目を向ける必要があった。2019年、ゲームの広告に費やされる広告費は前年比16%アップの33億ドル(約3500億円)に上るとeMarketerは予想している。 米エンターテインメントソフトウェア協会によれば、広告主たちはまた、ゲーマー全体の約46%を占めるにもかかわらず見過ごされがちな女性ゲーマーという存在に着目したのだという。

「将来ゲーマーになりたいと夢見る少女はたくさんいます」と、リアリティ番組で育った世代のカナダ人であるジアは言う。「ゲームの世界では、女性が多大なる影響力を発揮できるのです」。


HANA TJIA(ハナ・ジア)◎ユナイテッド・タレント・エージェンシー代理人。同社がスナップチャットなどを通じたネット上のインフルエンサーをマネジメントする会社を買収したのをきっかけに入社。買収されたのは、ジアの夫がビジネスパートナーと共同で立ち上げた会社であった。

文=ドーン・チミエレフスキー 写真=イーサン・パインズ 翻訳=荒川伸次

この記事は 「Forbes JAPAN 空気は読まずに変えるもの日本発「世界を変える30歳未満」30人」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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