なお、世界の株式市場においては、アルゴリズムによる超高速取引が暴落や混乱を招く引き金なっているという話は珍しくなくなった。日本の人工知能の専門家のひとりは、次のように話す。
「神のように完璧な人工知能が人間を支配するというシナリオは陰謀論やSFでしかない。しかし、無数のAIが互いに干渉し合った結果、人間には認識しづらい影響を社会に及ぼすというのはあり得る話だ。そして、金融の世界では実際にそれが起こっている」
消費税が増税され、デフレ圧力が高まるとされている現在、アルゴリズムによる“価格最適化”は日本経済にどのような影響を及ぼしていくのだろうか。EC率がまだまだ低く、これから市場が拡大していくとされている日本においては、真摯に目を向けるべき課題のひとつとなるかもしれない。
一方で、「効率化のための人工知能」(現在、実用化されているほぼすべてのAIがこの範疇)が孕むリスクも解明される必要がある。というのも、AIがもたらす効率化の果てに、人間が想像もしてなかったような「バットエンディング」が潜んでいる可能性は決して否定できない。
「仕事を奪う」という話題は表層の問題で、より構造的には「社会の閉塞感を強化する」という方向にAIが作用しないとは誰も言い切れないのだ。同時に「付加価値を生む人工知能」をいかに生み出すかという議論も、イノベーションを目指す研究者やビジネスパーソンのなかで深められるべきだ。
節約のための人工知能が飽和し始めた現在、富を生む人工知能の存在が強く求められている。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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