ぶち当たった「30人の壁」──新野さんが、創業初期に「ルールを決めよう」と発案した時に、梅田さんはしっくりきていなかったと聞きました。当時はたしかに、「なんか新野がフワっとしたこと言っているな」とくらいにしか思っていませんでした(笑)
新野から、「この本を読んでおいて」と『ビジョナリーカンパニー』(ジム・コリンズ 著)を渡されたりもしたのですが、私はたいして読みませんでしたね(笑)
新野は、一生懸命伝えようとしてくれていたのですが、あまり興味がもてなかったんですよね。それよりもまず売上を立てたい、早くお客様にサービスを提供をしたいということしか頭にありませんでした。
しかし、社員数が30人になった3〜4年目ぐらいの時に、業績は堅調なのに、社内がギクシャクする事案が散見されるようになりました。
例えば「ニュース事業をやりたい」と社内で私が言い出した時のこと。みんな盛り上がると思って話をしたら、メンバーがシーンと静かになってしまいました。その時には、マネジメント側とメンバーの間に意識の溝ができていたんです。そして、新野に「梅田さんが自分を見失っているから何とかしてくれ。方向性がおかしい」とメンバーから相談がいく始末でした。
飲み会の席でも、創業当初はみんな未来のことしか語っていなかったのに、その頃はその場にいない人の悪口やネガティブな会話ばかりになってしまっていました。
メンバーそれぞれが、自分たちの価値観や前職の価値観をもち出して闘わせている組織状態になっていたのです。価値観には正解がないので、正解がない議論を繰り返しているだけではゴールが見えることはありませんでした。
それまでは、マンションの一室で、いつもご飯を一緒に食べたり、会社に泊まったりしていたので、何も言わなくても見ている未来は一緒でした。必然的に、メンバーの性格や価値観も理解し合うことができていました。しかし、組織が大きくなるにつれ、歪みが生まれてきていたのです。
──どのように問題を解決していったのですか?意識的に一緒にご飯を食べに行くなど、コミュニケーション量を増やそうと考えました。しかし、よく考えたら社員が1000人に増えた時にはこの方法は通用しません。
そこで、新野たちと話し合いを重ねて、「ユーザベースには、共通の価値観軸がないことが問題だ」とようやく腹落ちしたんです。私は、「3年前に新野が言っていたのはこのことだったのか」と、バリューの大切さに気がついたのです。
──組織運営を実践しながら、そこに気付いていったのですね。 はい。「7つのルール」を掲げて、ようやく組織の価値観軸を掲げられるようになりました。自分たちが腹落ちする言葉にしていきたいと思い、真剣に話し合って決めていきましたね。
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