その30人に選ばれる人々のライフスタイルとは、どのようなものか。仕事とはどう結びついているのだろうか。
彼ら、彼女たちのライフスタイルを深掘りする連載「UNDER 30 STYLE」に今回登場するのは、昨年「Business Entrepreneurs(起業家)」部門で選出された「クラスター」創業者兼CEO、加藤直人。
VR技術を活用してバーチャルイベントを開催したり、ヘッドマウントディスプレイを装着してイベントに参加したりすることが可能になるプラットフォーム「cluster」の開発・運用を手がけるクラスターを、2015年に立ち上げた。
イベント会場の安全確保を求められる主催者、往復の交通や会場での混雑の忍耐を迫られる参加者の負担をゼロにすることを可能にするのが、clusterだ。
2018年8月に世界で初めて開かれた有料チケット制のバーチャルイベントでも、clusterがプラットフォームとなったことで話題を呼んだ。
好きな場所にいながら、好きなイベントに参加できる──。これはものぐさなオタクだけではなく、多忙なビジネスパーソンにとっても夢のようなことだろう。
その夢の実現に奔走する「オタク」の加藤は、オフの時間をどう過ごしているのだろう。
──京都大学の大学院を中退した後に引きこもり生活を3年ほど続けていたと聞いています。その時の経験がやはり、現在手がけている事業と大きな関係があるのでしょうか。
大学院を辞めてから起業するまでの間、ほとんど自宅にいたのは確かです。ただ、それは外出する理由があまりなかったからです。
友達とはネットでつながっていたし、買い物もネットで済ませることができた。
アプリやウェブの開発も仕事としてやっていましたが、これも自宅でできることです。世間とはつながっていたし、忙しいときは忙しく過ごしていましたが、それも苦ではなかった。
何週間か仕事をしたら、何カ月かは活字や映像作品、音楽、ゲームといったエンタテインメントのコンテンツにどっぷり浸かって過ごす、楽しい引きこもり生活を送っていました。
現在のclusterにつながる技術の開発を始めたのは、2014年にVRを初めて体験して「すげぇ!」と驚いたことがきっかけです。そこから、「ネット上にはない、こんなに凄い体験があるなら、外に出なくちゃ」と引きこもり生活を卒業しました。
でも、VRに強く惹かれたのも「これがあれば、わざわざ出かけなくても自分の部屋で、大好きなアーティストのライブに参加できる!」というのが最大の理由でした。
自分が行きたいライブに参加することで発生する移動が、合理的ではないとずっと思っていたんです。