世界最高峰のワイナリーが家族経営を続ける理由

プリムム・ファミリエ・ヴィニ(Primum Familiae Vini)のメンバーの貴重なバック・ヴィンテージのワイン(2019年7月筆者撮影)

フランスの夏は、カラッとした天候で気持ち良い。緯度が高いシャンパーニュ地方は特に、日も長く、夏は夜9時過ぎまで明るいベスト・シーズンだ。

7月のある夏の夜、素晴らしい眺望を誇る5つ星ホテル「ロワイヤル・シャンパーニュ」のテラスで、100名を超える参加者によるレセプションが開かれた。英国王室の御用達メゾンのポル・ロジェの大型ボトルのシャンパーニュがふんだんに振舞われ、参加者たちは皆、グラスを片手に会話を楽しんでいた。


英国王室の御用達メゾンのポル・ロジェの逸品(Photo by Michael Boudot)

参加者はまさに老若男女。重鎮の装いをした70歳を超える紳士から10代の青年たち、赤ちゃんを抱えた夫婦や就学前の子どもたちもいた。

これは、最高峰のワインを造る家族経営のワイナリーを所有するファミリーからなる団体「プリムム・ファミリエ・ヴィニ(Primum Familiae Vini、PFV)」の、年次総会のキックオフ・イベントだったのだ。

PFVは、1992年に、スペインの大手トーレス・ワイナリーの当主ミゲル・トーレス(Miguel Torres)氏とブルゴーニュの老舗ドルーアンのロベール・ドルーアン(Robert Drouhin)氏により結成された団体で、加入メンバー数は12に限定される。いずれも、フランス、イタリア、スペイン、ドイツ、ポルトガルの各ワイン産地を代表する生産者で、世界のワイン愛好家にとって垂涎の的であるワインを世に送り出している。


スペインのトーレス・ワイナリーのミゲル・トーレス夫婦

メンバーは、両者に加えて、フランスはボルドー1級シャトーのムートン・ロートシルト、ローヌの代表格「シャトー・ボーカステル」のペラン・ファミリー、アルザスの老舗ヒューゲル、シャンパーニュのポル・ロジェ、伊トスカーナの名門アンティノリ、同じくトスカーナで「サッシカイア」を所有するテヌータ・サン・グイド、スペインの最高級ヴェガ・シシリア、独の名門エゴン・ミュラー、ポルトガルで伝統あるポルトを造るシミントンが名を連ねる。

そして直近で、ボルドーの1級シャトー・オー・ブリオン等を所有するルクセンブルグ公国ロべール王子(Prince Robert de Luxembourg)が加入した。実に錚々たるメンバーだ。


PFVの年次総会。メンバーの12のファミリーから100名を超える人々が参加した。(Photo by Michael Boudot)

年次総会は、各メンバーが順番にホストを務めるが、今年は、エペルネを拠点とするのポル・ロジェで開催された。2日間にわたり、運営リーダーによる戦略会議や次世代によるパネル・ディスカッション、食事会など様々なプログラムが組まれた。
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文=島悠里

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