PFV(プリムム・ファミリエ・ヴィニ)のメンバーになるには、家族経営のワイナリーであることが必須条件だ。メンバーは、招待制で、全会一致で決められるが、何より、価値観が共有できることを重要視する。すでに国際的な評価を得ていて、お互い切磋琢磨し高め合い、将来のワイン業界に貢献できると認められなければメンバーには選ばれない。
PFVの目的は多岐にわたるが、コアとなるのが、ノウハウや知識、経験の共有だ。例えば、トーレスは持続可能なワイン造りの先駆けであるから、他のメンバーはその経験を参考にできる。ワイン業界の大きな話題の一つである気候変動についても、意見や経験を交換し、対応策を考えている。
シャンパーニュ・メゾン、ポル・ロジェで開催されたPFVのレセプション(Photo by Michael Boudot)
グループ全体として、例えばドルーアンはオレゴン、ペランはカリフォルニア、トーレスはチリなど、新世界のワイン生産地でもワインを造っていて、広範な地域をカバーしている。
ブルゴーニュの老舗の造り手「ドルーアン」のフレデリック・ドルーアン氏は、「問題に直面した時など、他のメンバーの過去の経験や知識から学ぶことがある」と強調する。また、醸造責任者のヴェロニク・ドルーアン氏は、「ワイン醸造という技術的な情報も共有することで、新たな視点が得られる」とも言う。
このファミリーでは、4兄弟がそれぞれ、CEO、醸造家、マーケティング、ブドウ栽培を担当し、家族が一丸となって運営にあたっている。
フレデリック・ドルーアン氏(2019年7月筆者撮影)
もう一つの大事なグループの意義が、次世代の育成だ。伝統工芸を継承することの難しさはワインに限った話ではないが、長年続いていた家族経営のワイナリーが、後継者問題により売却される事例は少なくない。
伝統を絶やさず継承していくには、次の世代に、若いうちから意識を芽生えさせることが鍵となる。その一環として、年次総会では、次世代のメンバーによるパネル・ディスカッションも開かれた。早い段階でファミリービジネスへの関心を持ち、同年代の他のメンバーと絆や連帯感を育む機会を設けている。