世界最高峰のワイナリーが家族経営を続ける理由

プリムム・ファミリエ・ヴィニ(Primum Familiae Vini)のメンバーの貴重なバック・ヴィンテージのワイン(2019年7月筆者撮影)


変化の激しいワイン産業において、考える力や先を読む力は不可欠だ。PFV(プリムム・ファミリエ・ヴィニ)の場合、模範となるのは自分の親や親戚だけではなく、他のワイン産地で成功を収める先輩たちなのだ。彼らとの交流を通じて、視野を広げ、自分の家族が代々引き継いているものがいかに特別なものかも実感できる。

日本人でアルザスのヒューゲル・ファミリーに入ったヒューゲル・かおるさんは、「PFVは第2の家族のような存在」と言う。


年次総会に参加していた次世代を担う子供たち(Photo by Michael Boudot)

社会的責任と持続性

大手による寡占化が進み、次々と新しいワイナリーが参入してくる競争が激しいグローバル・ワイン業界において、家族経営で生き残っていくことは容易ではない。そうした経営環境の中で、PFVは、家族経営のワイナリーだからこそ達成できる模範を示そうとしているのかもしれない。そして、その思想は、環境に配慮した持続可能なワイン造りなど、ワイン業界全体への貢献、そして業界の垣根を超えた社会的課題への取り組みへと広がる。


PFVのリーダーたち(Photo by Michael Boudot)

その一例が、定期的なチャリティ・オークションの開催だ。彼らが生産するワインは、熱烈なワイン愛好家からの支持を得ていて、特に希少な古いヴィンテージのワインは、高額で取引されている。このオークションでは、12の生産者が、それぞれ稀有なワインを寄贈する。

2019年10月には、ニューヨークの3つ星レストランで、メンバーのワインと合わせたディナーとワイン・オークションが開催され、その収益は「No Kid Hungry」というNGO団体に寄付される。2020年には、東京でも同様のディナーを開催予定で、PFVメンバーが東京に集結する。

ワインは国境を越える。これらのワインやメンバーの活動を通じて、伝統工芸が息づく日本でも、代々受け継いでいくことの重要性や、その社会的意義について考えるヒントが得られるかもしれない。

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文=島悠里

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