トイレ発IoT革命。インドの「スマートトイレ」が変えるもの

インドのEトイレを利用する女性 by Gettyimages

ヒンドゥー教の聖典「ビシュヌ・プラーナ」には、「便所に行きたくなったら家から矢を放ち、それが地面に落ちた場所より遠くで用を足すべし」と書かれているという。それくらい、インドにおける「屋外排泄」の文化は根強い。

「(インドでは)人口約13億人のうち約5億人がトイレのない家に暮らし、茂みや道端で用を足す。(中略)屋外で用を足す人は世界全体では約9億人で、インドだけでその6割を占める。野外での排泄が主な原因とされる感染症で、5歳以下の子どもが年間約12万人も死亡している」(朝日新聞デジタル、2017年11月26日より)ともいう。その背後には、冒頭の引用にもあるように、トイレは不浄なものであり、家にあってはならないとするヒンドゥー教の教えが色濃くあるようだ。

そんなインドで、完全コンピュータ制御の公衆トイレが誕生した。Forbes Indiaから以下翻訳転載する。


汎用パケット無線サービス(GPRS)を使って遠隔からの維持管理と監視が行える21世紀型スマートトイレ(Eトイレ)の開発製造に成功したのは、インドにあるイーラム・サイエンティフィック・ソリューションズ(本社:インド、ケララ州=インドのマラバール海岸沿いの州、以下イーラム)だ。

屋外で排泄する人が後を立たないことと、トイレの管理維持の問題が解決されなかったインドで、自動清掃式で移動可能、しかも環境にやさしい「Eトイレ」が現実的な解決策として登場した。ケララ州に本社を置く同社が開発したEトイレは、インド初の無人コンピュータ管理の公衆トイレだ。


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イーラム・サイエンティフィック・ソリューションズ会長兼社長シディック・アハマド

この製品はセンサーで作動し、自動清掃と節水の機能があり、汎用パケット無線サービスシステムを使って遠隔で維持管理と監視を行うことができるIoT化トイレだ。

「この無人トイレには自動アクセス制御機能がついており、ウェブを通じて遠隔で分析と管理ができます。汚物の処理は、付属の下水処理装置(STP)で行います」

こう説明するのは、この製品の開発元であるイーラム・サイエンティフィック・ソリューションズ会長兼社長、ドクター・シディック・アハマドだ。同社はこの製品を2010年から、商業ベースで販売している。

Eトイレ第1号は、ケララ州コジコーデに設置された。小売店で働く女性たちがトイレ不足を訴えたことをきっかけに、イーラムとの協力が実現したのだ。
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文=Naini Thaker, Naandika Tripathi 写真=Amit Verma 翻訳=笹山裕子/トランネット 編集=石井節子

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