トイレ発IoT革命。インドの「スマートトイレ」が変えるもの

インドのEトイレを利用する女性 by Gettyimages


設置は3000台以上。国有鉄道にも

以来、イーラムはインドの国内外で3000台以上のEトイレを設置してきた。カスタマーは、バンガロール市当局(BBMP)、「タタ・コンサルタンシー・サービシズ」、「ケララ・ウイメンズ・ディヴェロップメント・コーポレーション」といった組織や地方自治体、村議会、そして軍の宿営地委員会などだ。

「2018年の『世界トイレの日』には、インド国有鉄道が列車にEトイレを設置しました。またタタ・コンサルタンシー・サービシズのような民間企業は、企業の社会的責任(CSR)活動の一環としてEトイレを購入しています」。アハマドは言う。

このEトイレの価格は20万ルピー(約30万円)から200万ルピー(約300万円)までで、バリアフリーの製品など、幅広い品揃えがある。

硬貨を入れると使えるもの、無料で使用できるものの2タイプがある。官公庁や企業は悪用を防ぐため、硬貨(通常1ルピー)を入れて使うタイプを購入するケースが多い。公立学校では無料で使用できるタイプが選ばれる。地方では、国会議員や地元の村会が出資することもある。

Eトイレに必要な維持管理については、イーラムが年間の維持管理契約(AMC)プランを提供している。「維持費は1カ月3500ルピー(約4800円。人による清掃が含まれないプラン)から。総合的なプランの料金は1台あたり1カ月5100ルピー(約7600円)で、システムの維持管理、ウェブサポート、定期的な人による清掃、部品の交換、保険料が含まれます」。当初は、Eトイレの利用を地方の人たちを広めるのに苦労があったという。

「ほかにもさまざまな問題が立ちはだかりました。破壊行為や公共の施設に対する人々の無関心、一部の顧客の所有者としての自覚の欠如、システムの維持管理をはじめ、必要な技術に熟達した人材の不足などです」。アハマドは言う。しかし利用者の反応をもとに少しずつ製品の改良を重ね、人々の意識を変えることができた。


昔ながらのインドの公衆トイレ(インド、グルガーオン市) by Shutterstock

Eトイレの外に、絵入りの「使い方」説明の掲示も始めた。「24時間対応の電話サービスを始め、ユーザーにいつでも使い方を説明できるようにしています」。アハマドは言う。

アプリも登場

また、新たにEトイレのネットワークを構築したのに合わせて、アプリサービスも開始した。このアプリを使えば、地図やリストから一番近いEトイレを見つけることができる。

「将来はサウジアラビアと提携し、同国にも公衆衛生の持続可能ソリューションを提供する計画です。さらに他の湾岸協力会議(GCC)加盟国にも働きかけて、総合的な公衆衛生ソリューションを構築しようと考えています」アハマドは言う。

文=Naini Thaker, Naandika Tripathi 写真=Amit Verma 翻訳=笹山裕子/トランネット 編集=石井節子

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