今回の旅を通じて、日本とフィンランドとの共通点や違いに着目し、私たちが学べるヒントを探った。このシリーズの最終回である5回目は、初めてのフィンランド式のサウナでの不思議な体験と、日本で公開中のサウナ映画から見えたフィンランド社会の意外な顔をお伝えする。
憂鬱なサウナの時間
「今回のツアーでは、サウナに入る時間がありますので水着の用意をお願いします」
旅に出る前にそんな連絡があり、私は身構えた。そして日程表を見て、さらにげんなりした。サウナに入るため、2時間たっぷりと時間が取られていたからだ。
銭湯や温泉は好きでも、長湯はできない質だ。のぼせやすいので、日本でサウナに入っても5分もたたないうちに出てしまう。そのうえ、初対面の人たちと一緒に入るなど御免だ、と思った。「フィンランド式サウナは別もの」とは聞いていたものの、私の不安を解消するには至らなかった。
実際にフィンランドを訪れると、ヘルシンキの市街地に屋外プールが併設されたサウナを見かけた。こんなところにもあるのか。聞けば、フィンランドには自宅やオフィスなどプライベートも含めて、人口約550万人に対して約300万個のサウナがあるという。恐るべし、フィンランド人のサウナ愛……。
ヘルシンキ市街地にある屋外プール付きのサウナ
私の初めてのフィンランド式サウナの体験は、最終日に待っていた。ヘルシンキのPRを担う「ヘルシンキマーケティング」の女性担当者・サラの案内で、フィンランド湾を臨むヒルトン・カラスタヤトロッパホテルへ向かった。
ヒルトン・カラスタヤトロッパホテルの一室の内観。
ここは歴史あるリゾートホテルで、ムーミンの作家トーベ・ヤンソンが、若い頃に宿泊しながら、花柄の壁画を手書きで描いたゲストルームがある。ホテルの案内人が特別に見せてくれた。祖父母の家に来たかのような、木目の梁が生かされた素朴な空間だった。
ムーミンの作者トーベ・ヤンソンが壁に手書きで描いた室内装飾