サウナは、男女別で使用し、私は、案内してくれたサラと2人で入ることに。サウナとフィンランド湾に位置する海とを行き来して楽しむという。18時半ごろだったが、まだ辺りは明るい。まず、海に入ることを想定していなかった私は、サラのひまわりが描かれた夏らしく明るい水着と自分の持ってきた水着を比べて、恥ずかしくなった。なんと祖母から譲り受けた、暗いグレーの練習用水着を持ってきてしまったのだ。
彼女にそう伝えると、にっこり笑って英語で答えた。「外に出るときはバスローブを羽織って行けば大丈夫よ。さあ着替えて一緒に入りましょう」。
私が体験した不思議な「サウナ・マジック」
恐る恐るサウナに入ったが、私が知っている日本のサウナほど熱くないのだ。調べてみると、日本では100℃以上の高温サウナを好む人も多いようだが、フィンランド式では80~90℃が一般的のようだ。フィンランド式サウナは、熱したサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」が特徴的。
サラがサウナストーンに水をかけると、蒸気が発生し、爽やかなミストのようになって気持ちよかった。汗は流れるように出てきたが、不快ではなかった。
私は2人きりの空間で、不得手な英語でコミュニケーションをとることにも不安があったが、このときばかりはなぜか話が弾み、「サウナ・マジック」だと感じた。サラのほうでも、私の言いたいことを理解しようと、かなり耳を傾けてくれたと思うが。
フィンランドの人たちは、夏になると、家族で山のコテージのような別荘に行き、サウナと湖などを行き来してリラックスするのが一般的だという。サラに誘われて、外の海へ。すると旅の参加者の男性陣がすでに海の中に入っていた。
サウナ後に入った海は、太陽に照らされて輝いていた
夏至の時期でまだ日差しがあり、海面は穏やかに波打ち、キラキラと輝いていた。当時の気温は20℃弱。海水は冷たく、ひざ下まで水がきたところで立ち止まってしまった。みんなから「早く!そのまま一気に入って!」と呼ばれたが、なかなか決心がつかない。
サラからは「好きなタイミングで入って。でも入ったら、慣れて気持ちよくなるから」と言われ、スーッと足先から肩まで海中に滑らせるようにゆっくり入っていく。確かに、日差しを浴びているからか、少ししたら水温にも慣れてきた。
それから何回かサウナと海を往復し、フィンランド式のリラックス法を体感した。参加者のひとりが、フィンランドでつくられたというジンを持ってきており、テラスでひと口だけ飲ませてもらったが、その味わいは格別だった。
20時を過ぎても日は昇ったままなので、時間の感覚を忘れて、あっという間に2時間が過ぎた。最初の不安はいつのまにか消えて、気づけばサラの彼の話まで聞くほど、円滑なコミュニケーションができていた。サウナの中で向き合ったことで、英語が不得手でも心が通じた気がした。