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国境は知っている! 〜ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル


韓国で刊行された対馬の旅行ガイドブックを見ると、対馬はまるで南国のビーチリゾートのように紹介されている。


対馬の美しいビーチで遊ぶ韓国の人たち。韓国で刊行されたガイドブックより

観光客で賑わう数カ月前の「風景」を知らない者にとって、あらためて気になるのは、なぜこれほど多くの韓国人が対馬を訪れていたのか、である。この点について、釜山対馬事務所の関係者に訊くと、以下の3つの理由を挙げ、説明してくれた。

・韓国から最も近い外国である
・外国であるのに安く行ける
・知名度の高さ

「これまでPR活動を通じて、釜山市民や韓国国内の人々に話を聞きましたが、対馬は韓国人にとって海外なのに、たった1時間で行けるところが魅力。日帰りもできる。平日であれば、安いチケットでふらっと出かけて気分転換もでき、そのうえ免税店やスーパーで日本の商品が買える。ツアー代金も安いので、同好会や職場、学校の集まりなど団体で行っても経済的負担が少ないのです」

対馬と釜山の距離はわずか49.5km。対馬は釜山から目視できる島であり、世界遺産の日光は知らなくても、おそらく90%以上の韓国人が対馬を知っているという。

ちなみに、安いというのはどのくらいかといえば、韓国系の高速船のチケットを旅行会社で予約すれば、平日のスペシャル料金なら日帰り往復2万ウォン(1800円)である。なんと片道900円で海外旅行ができてしまうのだ。

もし東京から船で1時間の場所に外国のビーチリゾートがあれば……。パスポートが必要でも、多くの人で賑わうだろう。その至近感とお得感がハンパではないのだ。

対馬の関係者によると「釜山などの大都市で暮らす韓国人にとって、対馬は自然の宝庫。韓国語でオルレと呼ばれる山歩きが中高年の韓国人には人気で、対馬でもトレッキング客が多い。また海釣り客も多い。若い世代はサイクリングやビーチでキャンプをしたりして楽しめる。そして、何よりこれだけ韓国客が増えた最大の理由は、2011年以降、釜山・対馬の定期航路が増えて、船会社と旅行会社の営業力が、観光客誘致に大きな力を果たしたことに尽きる」と話す。

あるペンション経営者も対馬のもうひとつの側面をこう説明する。

「韓国の旅行市場からみて対馬のコンペティター(競合相手)は済州島。だが、向こうは観光開発が進み、カジノやリゾートホテルが林立しているが、対馬には自然が多く残っている。韓国人客からも、対馬はコンクリートビルなどたくさん建てないで、このままでいてほしいと言われる」

いまや日本人より出国率の高い韓国人は、海外旅行経験が豊かで、成熟した消費者だったはずである。彼らが対馬の魅力を評価するのは当然かもしれない。

連載:ボーダーツーリストが見た「北東アジアのリアル」
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文・写真=中村正人

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